(VOVWORLD) - ベトナム北部山岳地帯に居住している少数民族ザイ族は豊かな文化を誇りにしていますが、「ピレ(Pi Le)」という伝統楽器もその文化を支える一つと言えるでしょう。
ピレの演奏団 |
ピレという楽器は唇をふるわせて音を出す吹奏楽器で、マウスピース、マウスパイプ、ベルという3つの部分からなります。マウスピースは銅製の口金ですが、外側は松の木材で覆われています。木材で作られたマウスパイプは長さが30センチ~40センチで、その上には、同じ間隔を置いてくり抜かれた穴が7つあります。また、マウスパイプの下にも穴が1つあります。ベルは銅製の円すい形のものです。
こうしたピレは一見、簡単そうな楽器ですが、その吹き方はかなり難しいです。そのコツは、マウスパイプにある穴を押すだけでなく、マスパイプを撫でるスキルによるものです。しかし、ピレが吹奏できるザイ族の人はかなり多いです。ピレは村の行事や祭りに欠かせないものなのです。ピレのメロディーは、人間と神様との連絡手段であり、人間同士の気持ちの表れですから。
そのため、ザイ族の村すべてにはピレの演奏団があります。演奏団は4人で構成されるのが一般的で、ピレの他、笛、太鼓もあります。演奏団のメンバー、特にピレの演奏者はスキルが上手いだけでなく、村人の信頼を得た人です。ピレの演奏者ア・フさんは次のように話しました。
(テープ)
「私はザイ族なので、ピレが大好きです。ピレを演奏することはザイ族の独特な文化の保存に役立つと思います。」
若者にピレの吹き方を教えているベテラン演奏者 |
ピレのもう一つの特徴は、いつでもどこでも演奏するわけではないということです。行事や祭りのときしか演奏しないからです。また、行事によってそのメロディーは異なります。結婚式で演奏されるメロディーは楽しさや明るさがあるのに対し、葬式で演奏されるメロディーは悲しさや寂しさが際立つということです。
現在、ピレの保存と開発は村人と現地行政府が共に重点的な任務として位置付けられています。ラオカイ省バッサト県バンクア村人民委員会のグエン・ヴァン・タム委員長は、ピレはザイ族の豊かな文化を支えるもので、どうしても守らなければならないとの考えを示し、次のように語りました。
(テープ)
「村の行政府は、ピレの演奏団に子どもにピレを教えることを奨励しています。また、ピレの演奏団の活動に便宜を図って、演奏団の活躍を目指しています。」
現在、近代的な楽器が演奏できるザイ族の人々が増えつつありますが、ピレは依然として、ザイ族の生活において重要な存在であり続けています。