ブラオ族の「不運を追い払う儀式」とは

(VOVWORLD) - 「不運を追い払う儀式」はこの民族の信仰生活の代表的な現われであるとされています。

ベトナムの少数民族の中でも最も人口が少ない民族5つの一つ、ブラオ(Brao)族は中部高原地帯テーグエン地方のコントゥム省に居住し、同地方の多様な文化の一端を担いながら、伝統的な祭りや儀式を含む独特な文化を維持しています。その中で、「不運を追い払う儀式」はこの民族の信仰生活の代表的な現われであるとされています。

ブラオ族の「不運を追い払う儀式」とは - ảnh 1 ブラオ族の地酒を頼んでいます。

「ボンソルック(Bon Xo Ruk)」と呼ばれる「不運を追い払う儀式」は疫病や洪水、不作などで村人の平穏な生活を脅かす不運な事件が起きたときに行われるものです。ブラオ族の人々は、人間の行動に怒った天がこれらの事件を引き起こしたので、この儀式を行って天に謝罪しなければならないと考えています。ベトナム社会科学アカデミーのブイ・ゴック・クアン博士は次のように語りました。

(テープ)

「ブラオ族の儀式は様々で豊富です。中でも、「ボンソルック」と呼ばれる「不運を追い払う儀式」は最も重要です。この儀式は、神様に不運を追い払ってもらい、村人に幸運を与えるよう祈るためのものです。そのため、村人は、この儀式を行うために多くの手間暇ヒマをかけます。」

「ボンソルック」が行われる数週間の前、村長評議会は準備計画を立て、それぞれの村人の能力に従って具体的な役割分担をします。女性は食料食品の調達や薪、水を用意するのに対し、男性は森へ竹を取りに行きます。この竹は、村を囲む塀に使われます。3日間も行われるこの儀式が始まると、村全体が完全に封鎖されます。もし、前に来たお客さんがいれば、儀式の前に村を出るか、3日間で村人と一緒に儀式を楽しみます。コントゥム省ゴックホイ県ボーイ村に住むブラオ族の一人タオ・ロイさんは次のように話しました。

(テープ)

「最初の日に、村人はコメやお酒、薪など儀式に必要な物を用意します。2日目は儀式の日ですが、村長は、不運を追い払って幸運を迎えるために植えられる「ケイネウ(Cay Neu)」に一頭の水牛をしめます。その後、子豚を屠殺し、その血をケイネウにつけると共に、その血をお酒と混ぜてケイネウの周りに撒きながら、神様に不運を追い払って幸運を与えるようお祈りをします。」

最初の日に、村人は全員が、台所で火を灯してはいけないというタブーがあります。火は元々、神様に与えてもらった神聖なものですが、村が不運に遭ったことはその火が神聖さを失ったことを意味しますから、もう一度神様に火を与えてもらうようにお祈りをしなければならないと考えられています。そのため、村人は初日は暖かい料理を食べず、前の日に作った料理しか食べません。

2日目は、神様に新しい火を与えてもらうように祈る日で、最も重要です。供え物は水牛の肉・肝臓・血、鶏の肉と血、及び、地酒です。また、村人に選ばれた若い男性一人と若い女性一人がそれぞれ竹の切り株の根一つを村の集会所に持っていきます。これらの切り株は村人によって厳格に選ばれました。先ほどのブイ・ゴック・クアン博士は次のように語りました。

(テープ)

「これらの竹の切り株は儀式の主要な供え物です。村長はこれらの切り株をもらった後、村に幸運が訪れるように、切り株に火を灯す儀式を行います。」

村長が神様に祈り始めた時、2人の若者は2つの切り株を互いに摩擦させます。切り株に火が出れば、村人はドラを叩き始め、火の回りで歌ったり踊ったりします。この火は、不運が離れて幸運が村に訪れることを象徴します。先ほどのクアン博士は次のように語りました。

(テープ)

「2日目は儀式の主な日です。村人はこの火を使って料理をし、徹夜して踊りなどをしながら、宴会を楽しみます。」

2日目は神聖な信仰的活動の日であるのに対し、3日目は家族の日です。女性はその神聖な火を自分の台所へ持って帰り、男性が持ってきた儀式用の供え物を調理しました。神聖な火で調理された供え物は神聖な料理として、家族全員が必ず食べなければなりません。その神聖な食事後、村人は全員、村の近くにある谷川へ行って体を洗い身を清めます。これは、不運や悪い気持ちを追い払うという効果があると考えられます。

「ボンソルック」という不運追い払い儀式はブラオ族の信仰生活の代表的なものですが、残念ながら、消えている恐れがあります。そのため、この儀式を守ることは差し迫った課題となっています。

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