ベトナム キン族の文化

ベトナムには54の民族が共存していることでわかる通り、豊かで多様な文化に恵まれています。キン族、すなわちベト(Viet=越)族は独自の風習を持ちながら先祖代々伝えられてきました。ベト族は信仰する宗教に強い信頼を託しています。それではベト族の理解を深めるために、民族学博物館内のベト族に関する展示コーナーを訪問してみましょう。

このコーナーの面積は20平方メートルにすぎませんが、創意工夫されたアレンジで、多数民族キン族の概略が紹介されています。民族学博物館・教育室のホアン・ミン・グエットさんは次のように語っています。

(テープ)

「ではベト族についてご案内いたします。ベト族を語るとき、稲作文化や大グループとなり集って暮らすという風習を抜きにして語ることはできません。ベト族にとって集落は行政単位であり、政治、経済、文化、社会の中心地でもあるのです。」

グエットさんはこのように語りました。
ベトナム キン族の文化 - ảnh 1
ベト族の稲作

大昔からベト族はラン(Lang)と呼ばれる集落で暮らしてきました。集落とは農村部にあるベト族の伝統的居住地で、村には壁の境界があり、村道、路地、宗教施設が整備されることで集団性、社会性が維持されてきました。ベト族の集落は主に平野にあり、河川に近いところに位置していたことから稲作や漁獲がベト族の主要な職業となっていました。さきほどのグエットさんは次のように話しています。

(テープ)

「ベトナムは地理的条件に恵まれ、3千キロメートルを超える海岸線や多くの運河があることから漁業が発達してきました。これに伴い、漁獲用具の生産業も発展しました。そのほか、カニやウナギを獲るための道具も生産されました。」

グエットさんはこのように話しました。

ベトナム キン族の文化 - ảnh 2
ノンづくり

博物館にはベト族の伝統職業を紹介するコーナーも設けられ、ノン(Non)といわれるスゲ笠や、銅の鋳造、焼き物、漆製品などが展示されています。

ところでベト族の家は自然とよく調和し、家の建設に際しては風水が重要視されています。丘陵地帯、平野部、沿海地域などぞれぞれの地域の条件に見合った住宅が建てられたのです。民族学博物館・研究収集室のブ・ティ・タイン・タムさんは次のように語りました。

(テープ)

「ベト族の住宅には中心となる主屋(おもや)とハナレの家、わきの家、台所、家畜小屋(かちくごや)、広い庭、そして菜園があります。博物館では薬草園がありました。ベト族は薬草を栽培し、野菜としても使用してきたのです。また、雨水をためる貯水槽(ちょすいそう)もあります。」

タムさんはこのように語りました。

住宅の主屋には先祖の祭壇が置かれます。これはベト族の祖先崇拝の習慣を表します。グエットさんは次のような説明をします。(テープ)

「これは一族の長男の祭壇です。真ん中に果物が並べられ、そのそばに他の供養物が置かれます。また、金木水火土といった万物組成(ばんぶつそせい)の元祖(がんそ)となる五行(ごぎょう)を象徴するものがなければなりません。香炉(こうろ)は金、祭壇は木、水とお神酒(おみき)は水、蝋燭は火、瓶は土の象徴なのです。」


ベトナム キン族の文化 - ảnh 3

女神を祀る“聖母信仰”

博物館には女神を祀る“聖母信仰”の習慣を紹介するコーナーもあり、天、山林、そして土と水をつかさ(司)どる女神とされる3体(さんたい)の像が並べられています。なお、女神を祀る習慣があることでわかるように、ベトナムの家庭では母親は極めて重要な役割を果たしていることが理解できるでしょう。

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