現在、生活スタイルは大きく変わっていますが、北部ホアビン省に住むムオン族の高床式の住居は方角選をはじめ、建て方、家具の配置方法などが昔のままです。そしてそれぞれの住居には独特な美しさが隠されています。
ホアビン省ははムオン族の4つの居住地がありますが、ムオンビ(Muong Bi)という地域は最も古い居住地であり、ムオン族の文化“揺籃地”とされています。現在も、ムオンビの住民は昔から伝わる風俗習慣、信仰、服装を保っています。一方、ムオンビでの家々はまるで住民生活にまつわる博物館のようです。長老・ブイ・バン・カン氏の住居はムオンビの特徴的な高床式の家です。この家は木や竹で建てられた簡素なものですが、家族全員にとって重要な意味があります。カン氏は次のように話しました。
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「他の地方で高床式の床は材木を使用していますが、ここは竹で作られます。古い村なので、ムオン族の文化色を保存したいのです。この村で23軒の大きな高床式の家が建てられましたが、材木の床はありません。」
ムオン族にとって住居は大きな財産であり、祖先と源に向ける場所であるとされています。そうした理由でムオン族は住居を建てる際、土地や方角を慎重に選ぶのです。また、家は山方向に逆らってはいけません。ムオン族の考えでは家を正しい方向に沿って建てれば幸運が訪れるとされています。先ほどのカン氏の話です。
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「家では祭壇が置かれた方は上、窓は下の方角です。祭壇は家の同じ方角に置かれます。また、ほとんどの家は東南に沿って建てられます。」
ムオン族の高床式の住居は階段が2つあります。1つは前方に、もう1つは裏門の近くにあります。特に階段のはしごは3、5、7、9の奇数でなければなりません。彼らは奇数は幸運や繁殖をもたらすと考えています。一方、カマドは真ん中の部屋に置かれ、高床式の魂とされています。カマドは単に煮炊きに使用されるだけではなく、家族団らんの場所でもあります。寒い冬が来ると、家族全員がカマドの周りに座って、いろいろと話し合っています。高床式は複数の部屋に分けられますが、部屋の数はその家庭の裕福さを表します。アイ集落の住民ブイ・バン・ハイさんは次のように語りました。
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「新婚夫婦は奥の部屋に住み込みますが、未婚の娘や息子は真ん中の部屋、両親は前方の部屋に住みます。来客の場合、前方の部屋で食事をしますが、家族だけなら真ん中の部屋で食事をします。また、食事の時、年長者は上座に、窓に面しますが、年下は下の方に座ります。窓は主な方角とされます。」
高床式のそれぞれの部屋は1、2の窓があり、ボン(Voong)と呼ばれ、それぞれの窓には特別な意味があります。ヨメやムコが窓側に座るのはダブーですが、両親が亡くなるとこのダブーは解除されます。ムオン族は1月、2月、3月、5月に家を建てる習慣があります。さきほどのブイ・バン・ハイさんは次のように話しました。
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「家を建てる時、村人が手を貸す一方、萱を差し出しますよ。どの家も同じです。村人は互いに助け合っています。村の30世帯は必要な萱の3分の1を提供します。」
何世代も経ちましたが、ホアビン省にあるムオンビ地区の住居は昔のままの建築の特徴が保たれて、ムオン族の古い文化を表しています。それぞれの家はムオン族の生活スタイルや風俗習慣の証となることでしょう。