(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグエン地方のダクラク省ラック県に暮らす少数民族ムノン族は人と人とのつながりを大切にし、そのつながりを強化するための行事や祭りを頻繁に行っています。その中には長寿のお祝いがあり、このお祝いは親孝行を示すとともに、家庭内のつながり、および家族と村人とのつながりを強くします。
ムノン族の長寿のお祝い |
ムノン族の長寿のお祝いは60歳を超える人を対象に毎年1月から2月に行われるのが一般的です。ラック県ダックフォイ村ジエユク集落の祈祷師イクライ・シルさんによりますと、ムノン族は母系社会なので、かつては長女が長寿のお祝いを行っていましたが、現在はどの子どもも親の長寿のお祝いを行えるようになったとしています。シルさんは、長寿のお祝いでは神様への供養が最も重要であると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「60歳以上の人が長寿のお祝いの対象となります。お供え物が用意されると、祈祷師は式を始めます。最初に、山の神、森の神、水の神を招待し、式の開催の許可を得ます」
お供え物は豚一匹、3つの地酒の壺、ご飯を盛った3つの茶碗、水を一杯に入れた乾燥のひょうたんです。その中で、地酒は最も重要なお供え物です。ムノン族の考えでは、酒は神様の水なのです。神様が特使を通じて人間に酒の作り方を教えたため、酒は神聖なものとされています。地酒を造る前に、職人たちは体をきれいに洗わなければなりません。そうしないと、神様への尊敬を怠り、地酒が美味しくならないと考えられています。
祈祷師は神様に、長寿の人の健康を祈った後、地酒を飲ませます。また、神様の化身としてそばにいて守るという意味で、その人に腕輪を渡します。その後、家族は順番に長寿の人に酒と料理を味わってもらい、お祝いの言葉を述べます。家族に続いて、村人も地酒を飲みながら、長寿を祝います。先ほどの祈祷師シルさんは次のように語りました。
(テープ)
「長寿のお祝いでは、その人が健康で楽しく過ごし、子孫の模範になるようという意味のお祝いの言葉を村人からもらいます。これに対し、長寿のお祝いを受けた人は子孫を含む村人が団結し合って、学習・勤労を勧めます」
ムノン族の長寿のお祝いはシンプルに行われますが、親孝行を示すとともに人と人とのつながりを強くするという大きな意味を持っています。その意味でこの儀式はこれからもムノン族の村で大切にされることが期待されています。