(VOVWORLD) - ベトナムで最も多い少数民族として知られているモン族について触れるならば、この民族の独特な楽器である横笛「ケン」をすぐ思い浮かべることでしょう。この楽器はモン族の民族性の現われであるとされています。
「ケン」は男性から切り離すことができない存在です。 |
竹でできた横笛「ケン」はモン族にとって神と人間をつなげるもので、とても貴重な楽器です。また、この楽器は、恋人や友達に自分の気持ちを伝えるものとして、人間同士の大切なコミュニケーション手段の一つでもあります。そのため、ケンは団結を重視するというモン族の民族性を示すものです。
6本の竹からなるモン族の横笛「ケン」は、それぞれの長さによってその音色が違いますが、一番大きくて短い竹はそのメロディーのベースをつくるという役目です。「ケン」の音色は清らかで、聞く人の心に染み込んでゆきます。
特に、若い男性にとってケンは恋する女性に自分の気持ちを伝える愛のメッセージのようなものです。ケンを吹きながら、上手に踊ることができる男性は、女性の理想的な結婚相手とされています。
しかし、横笛ケンは、恋愛感情を示す手段であるだけでなく、結婚式や葬式、お祭りなどすべての行事にとって欠かせない存在でもあります。ケンは、嬉しい時も、悲しい時も、そして、お祝いの言葉を述べたい時も自分の気持ちを表す手段なのです。
そして、ケンの特徴は、動き回り体を動かし踊りながら、ケンを吹くということです。踊りはそのメロディーに合わせなければなりません。ケンを上手に吹くのは難しいですが、上手に踊りながら、吹くのはもっと難しいことです。しかし、それは、男性の力を示すもので、モン族の男性は子どもの頃から、ケンを習い始めます。実際、「ケン」を上手に吹くことができる10歳の子どもは少なくありません。そのため、モン族の男性ならば、誰もが「ケン」を吹きながら、上手に踊らなければならないと考えられます。その意味で、「ケン」は楽器としてだけでなく、踊りの道具でもありますが、男性から切り離すことができない存在です。そして、「ケン」を武器として利用できる男性もいたので、「ケンの武術」という言葉があります。北西部ラオカイ省バクハ県バンフォ―村に住むリ・セオ・フォンさんは次のように話しました。
(テープ)
「モン族の横笛『ケン』は、優秀な男性のシンボルです。この楽器は、かつて夜に悪い人と会えば、武器として使われることもありました。」
クラブで子どもに「ケン」の吹き方を教えているベテラン吹き手 |
こうした「ケン」は民族の重要な楽器としてモン族の人々に大切に保たれています。バクハ県では、近年、「ケン」を保つ取り組みが広がっており、その中で、2020年8月に、「バクハのケンクラブ」が設立されました。このクラブのメンバーは最初、バクハ県に住むベテラン吹き手20人でしたが、現在は100人以上にのぼっています。クラブは子どもに吹き方と踊り方を教えるとともに、「ケン」をより広く普及させています。
クラブの主任ザン・ア・ハイさんは次のように話しました。
(テープ)
「私たちは、『ケン』をステージで演奏するとともに、観光スポットで披露して外国人を始め、国内外の人々に知ってもらいたいと思います。これは、『ケン』を広く普及させるとともに、クラブのメンバーの収入を増やすでしょう。」
横笛「ケン」の音色はモン族の居住地に良く流れていますが、これからも多くの地方まで響び渡ることでしょう。