(VOVWORLD) - ベトナム北部山岳地帯にあるラオカイ省サパ町は世界的にも有名な避暑地です。サパは豊かな自然はもとより、少数民族の豊かな文化も誇っています。
モン族の若者 |
そのサパの人口の53%以上を占めるモン族の文化はこの地の魅力を支えていますが、特に、モン族の民族衣装はこの地のシンボルの一つとなっています。
少数民族モン族には白モン、青モン、黒モン、赤モン、モンマン、モンホア、そしてナーメオといった幾つものグループに分かれます。この分類は民族衣装や言語が基礎となっています。サパに住んでいるモン族のほとんどは黒モンで、黒が衣装のベースとなっていますが、他の地方の黒モンの衣装と違うところもあります。
モン族の衣装を作るための布の素材は、地元で栽培される亜麻の靱皮から採った繊維です。亜麻はアマ科の一年草ですが、高さが約1メートルほどあり、葉は小さく、線形で互生する植物です。夏、青紫色または白色の5弁花を開き、果実は丸く、中に長楕円形で平たい黄褐色の種子がありますが、種子から亜麻仁油を絞り、茎から繊維をとります。モン族は、亜麻から作られた糸は、死んだ人の魂と先祖とを結ぶ懸け橋だと考えていますので、民族衣装は伝統的な儀式にとって欠かせないものです。
サパに住むモン族の女性の衣装は色とりどりです。民族衣装のセットはズボン、ブラウス、腰帯、頭巾、そして脚を包むレッグラップという脚絆からなっています。ブラウスは襟の中央から前身頃の左側にスリットが入り、ボタンで留めます。また、襟と袖、裾に模様がついています。女性の服装についてモン族の文化研究者ザン・セオ・ガさんは次のように話しました。
(テープ)
「昔、サパに住むモン族の女性はスカートを着ていましたが、蚊がたくさんいる所に住んでいたので、ズボンを着るようになりました。このズボンは膝までです。ブラウスは袖が太く、多くの刺繍が施されます。しかし、畑仕事などをするときは、刺繍が少ない衣服を着ますが、祭りなどでは、必ず刺繍が多い方を着ます。」
布を染めているモン族の女性 |
モン族の女性はベトナムのどこに住んでいても刺繍が上手です。刺繍の模様は多様で、クロスから三角型、サークル、スパイラル、S字型にわたって、模様のレイアウトも調和しています。モン族の考えでは、これらの模様は太陽、気候、空間、時間を象徴するものであるとしています。これらの模様はモン族の女性の腕の器用さだけでなく、豊かな文化や気持ちを示しています。
モン族の女性の衣服は単に身に付けるだけでなく、審美的需要に応えるものでもあります。昔から、民族衣装はモン族の女性の器用さの目安とされてきました。モン族の習慣では、モン族の女性は、結婚前から、自分で結婚衣装を作るために、裁縫が上手でなければなりません。ですから、彼女たちは、祖母や母親から、手織りや、刺繍、縫い方などを教わります。
一方、モン族の男性の衣服は黒をベースにしますが、刺繍は少ないです。男性の衣服のセットはズボン、シャツ、上着と帽子です。刺繍はシャツの襟にしか施されません。上着はサパに住むモン族の男性の代表的な衣装となっています。この上着は4枚の布からなり、その中で、最も大きな布は上着の後ろにあります。モン族の文化研究者ザン・セオ・ガさんは次のように話しました。
(テープ)
「かつて、男性のシャツには青の大きいラインと小さいラインがありましたが、今は青から黒に変わりました。そして、上着はサパ以外に住むモン族の男性はほとんどが着ませんが、サパのモン族の男性は、お正月や祭りにこの上着を誇らしげに着ています。」
サパは世界的にも有名な避暑地なので、ホテルなどがどんどん建てられ変化しています。しかし、モン族を含む少数民族の色とりどりの衣装は依然としてサパのあちこちで見かけることができ、この地の魅力となっています。