森に対する感謝祭で披露された踊り

中部のクァンナム省テイザン県に居住しているコトゥ（Co Tu）族は1年中、いろいろな行事を催していますが、新年に行われる森への感謝祭は最も重要な行事です。大自然を大切にするコトゥ族にとって、森に対する感謝祭は、森の恩に報いるとともに、自然保護に関する人々の意識を高めるためのものです。

森に対する感謝祭はその年に森からたくさんの贈り物を受けたいという気持ちを表すのが狙いです。コトゥ族にとって、森は村の守神であり、村人の平穏な生活を守ってくれていると考えられています。コトゥ族の人々は、「森は家で、木は子供である。森を家のように、木を子供のように愛する」とよく言われています。森から何がしかのものをとろうとしたら、神様に申し込まなければなりません。そうしないと、病気になったり、村に罰金が科されます。テイザン県チョヒ村の村長クラウ・ブラオさんは次のように話しています。

（テープ）

「コトゥ族の人々は昔から、森を守る意識を持っています。これは、家の建設に必要な木材と、調理に必要な薪の供給源を守ることに役立ちます。そして、森は人間の生活環境を守るという効果もあります。」

テイザン県の多くの村は村の規約として、家を建てるため木を切りたい時、村長の意見を求めなければならないことや、伐採するときは、周りの木の影響を与えないようにしなければならないこと、原生林で木を切ってはいけないことなどを規定しています。そうしない人は厳罰を受けることになります。テイザン県アロ村に住むブリンさんは次のように話しました。

（テープ）

「かつて、チェンソーを買った人もいましたが、森を守る意識を教わった後、当局にチェンソーを収めました。現在、地元の人々は全員、森を守る意識が高まっていると思います。」

クアンナム省テイザン県の森林には、貴重な木がたくさん生息していますが、その中で、ベトナム語では「ポム」、日本語では「ラオスヒノキ」と呼ばれるヒノキ科の針葉樹の原生林があります。海抜1500メートルのこの原生林の面積は450ヘクタール以上で、そこには2000本以上のポムが生息しています。ポムは、香りもありますし、キクイムシによる被害もなくので、家具や美術手工芸品などによく使われます。そのため、ポムの原生林は減りつつあります。一方、テイザン県にあるポムの原生林は昔とほとんど変わりません。それは、大自然を大切にするコトゥ族の意識によるものです。テイザン県党委員会のボリュ・リエック委員長は次のように語りました。

（テープ）

「森を守る意識はコトゥ族のすべてが持っています。これは、コトゥ族の文化から生まれたものです。コトゥ族の文化について触れるならば、村の共同体を大切にする意識と、森を守る意識という2点を抜きにして語ることはできないでしょう。この2つの意識は互いに密接につながっているので、森を守る意識を維持するためには、村の共同体を大切にする意識も維持することがとても重要です。」

テイザン県の行政府は、地元の住民の生活改善を目指すため、原生林を探検するツアーや、森に対する感謝祭を始めとするコトゥ族の文化を体験するツアーなどを行い、観光を発展させる方針です。