(VOVWORLD) - この薬草風呂は、疲労回復や怪我治療、腰痛などに効果があり、とくに出産間もない女性によいと言われます。
ベトナム北部山岳地帯ラオカイ省のサパ町は世界的にも知られている避暑地として涼しい気候と美しい自然風景を誇っているとともに、モン族や赤ザオ族、ザイ族などの少数民族の居住地なので少数民族の豊かな文化も観光の重要なリソースと見なされています。その中で、赤ザオ族秘伝の伝統的な「薬草風呂」は国内外の観光客から好評を得ており、地元の人々に重要な収入源となっています。
薬草を計っているザオ族の人たち |
首都・ハノイから車で半日以上移動して、ようやく高原の町サパの中心にたどり着きますが、サパからさらに車で山奥に入った山岳地帯に「タフィン」という小さな村があります。タフィン村は少数民族赤ザオ族の居住地です。ザオ族は身にまとう衣装によって5つのグループに分けられており、赤い布を頭に着けたグループは赤ザオ族と呼ばれます。
赤ザオ族の人々は観光客にも友好的で、訪れると村人の家のもとで、日常生活を体験することもできます。もちろん、薬草風呂にも浸からせてもらえることもあります。高さ3mほどの釜で薬草を薪で何時間も炊き、成分を抽出します。それをバケツで何往復もして樽型の浴槽に移し、加水して湯加減を整えます。極上の薬草風呂の完成です。
ザオ族の村では月に2、3回程度、この風呂に入る家族が多いです。薬草の名前や効能は、女性たちが代々山に入り子孫たちに伝えてきた歴史があります。この薬草風呂は、疲労回復や怪我治療、腰痛などに効果があり、とくに出産間もない女性によいと言われます。現在は森で収穫した薬草と、市場で購入した薬草の両方を使用しています。タフィン村に住むチャオ・ス・マイさんの話です。
(テープ)
「血行を良くする薬草もあれば、妊娠中の女性に良い薬草もあります。また、赤ザオ族の女性は出産してから1週間後だけで、畑仕事をしなければなりません。こうした産婦の健康回復を促す薬草もあります。また、白髪対策として7種類の薬草を使います。よく薬草風呂に入れば、健康になるはずです。」
入浴剤の生産 |
こうした薬草風呂は、タフィン村のサパナプロ社が入浴剤を商品化したので、家庭でも気軽に入れるようになりました。同社のリ・ラオ・ロ社長は次のように語りました。
(テープ)
「最初は、来てくれた観光客が求めると、薬草をそのまま売っていましたが、薬学大学の先生の指導を受け、抽出方法などを教えてもらいました。この方法を使って入浴剤を作り、大量に売れるようになりました。」
2006年に設立されたサパナプロ社は最初は協同生産組合の形で活動し、村の13世帯が参加しましたが、現在は115の株主からなる株式会社になっており、株主は全員、村人です。株主の一人の話です。
(テープ)
「村が会社を持っていてうれしく思います。かつては、お金ではなく、会社の家の建設を手伝ったなど力で会社の活動に参加することにより、株をもらいました。その後はちょっとしたお金で株をもらいましたが、わずか50万ドン(2500円)でした。今は毎年約1000万ドン(5万円)の配当をもらっています。」
サパナプロ社の入浴剤は観光客に買い求められるだけでなく、ハノイやホーチミン市など多くの地方にも出荷されています。これにより、同社の年商が増えつつあり、現在は100億ベトナムドン(日本円で5千万円)にのぼっています。サパナプロ社は村人を雇い、彼らに安定した収入を与えています。雇用人の一人の話です。
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「私が会社に入ってからは3年間 になっています。私の仕事は薬草を煮ることです。畑仕事より楽ですが、収入は高いですよ。」
赤ザオ族秘伝の「薬草風呂」は地元の人々の健康保護だけでなく、村人の生活改善にも寄与しています。