東北アジア地域は、世界経済の発展事業の原動力としての役割を果たしていますが、多くの不安定要素を抱えています。2016年、この地域では平和、安定が維持されながら、衝突と紛争も頻発しています。
韓国テレビが朝鮮のミサイル発射実験について報じる
朝鮮民主主義人民共和国の核実験や、アメリカと韓国のTHAAD(サード)=高高度防衛ミサイルの展開、日本の軍事力の調整などが東北アジア地域の情勢に影響を与える動きと見られています。
火薬庫に例えられる朝鮮半島
中でも、朝鮮半島は緊張が続くホットポイントです。昨年、朝鮮民主主義人民共和国は2回の核実験や、24機の弾頭を使った10回のミサイル発射実験などを行い、国際社会の深い懸念を引き起こしました。
これに対し、国連安全保障理事会は2016年11月30日、朝鮮民主主義人民共和国に対する新しい制裁決議を採択しました。決議は、朝鮮の輸出による年間の外貨収入のうち、3分の1を占める石炭の輸出に上限などを設定しています。決議の履行により、朝鮮の外貨収入の25%に相当する総額8億ドルが削減されます。
こうした中、韓国や、アメリカ、日本は軍事的プレゼンスを強化し、軍事演習の規模を拡大させています。特に、韓国のパク・クネ政権はアメリカの支援を受け、THAAD(サード)=高高度防衛ミサイルを展開しました。
日中が領海を紛争している諸島(写真:KYODO)
これらの動きにより、朝鮮半島情勢は悪循環に陥っています。また、朝鮮の核実験は日本と韓国の情報機関が協力を強化することにも繋がりました。日韓両国政府は2016年11月23日、軍事上の秘密情報などを共有する協力協定に調印しました。今後は両国の同盟国であるアメリカを介在せずに軍事情報を直接供与し合うことが可能となります。これは東北アジアを含めアジア太平洋地域の情勢に長期的な影響を与えるものとされています。
領海紛争と韓国の政情不安定
そのほか、日本と中国との領海紛争も東北アジア地域の緊張情勢を増しています。日本政府は、2017年度予算案の防衛費を過去最大の5兆1千億円前後とする方針です。日本の防衛費が増加するのは5年連続となっています。
また、日本政府は集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法を施行し始めました。自衛隊の海外での武力行使や、アメリカ軍など他国軍への後方支援を世界中で可能とし、戦後日本が維持してきた「専守防衛」の政策を大きく転換しました。
一方、韓国では、同国のパク・クネ大統領とその親友による国政介入スキャンダルが発生し、パク大統領が職務停止に追い込まれ、大統領選挙が前倒し実施される見通しとなっています。これは韓国政情だけではなく、東北アジア諸国の政治、外交関係にマイナス影響を与えています。
こうした中、アナリストらは、「2017年にも東北アジア地域情勢は引き続き複雑に推移し、予断できない」との見方を示しています。そして、朝鮮民主主義人民共和国に対する国連の制裁措置が効果をあげるかどうかや、韓国大統領選の行方、日本の軍事力の調整、全地域の政治・安全保障・外交関係の局面などが焦点となるとしています。