(VOVWORLD) - 2017年はEU欧州連合にとって、難民・移民対策に関する加盟国間の不一致、経済の停滞、テロ攻撃、EU離脱に関するイギリスとの交渉など様々な困難に直面した年でしたが、EUは、周囲が認めるべきの成果を収めました。
EU議会の会議 |
国防力を強化
EUは12月11日に開いた外相・国防相会議で、域内の防衛協力拡大を図る新機構「(PESCO)常設軍事協力枠組み」の創設を決定しました。イギリスとデンマーク、マルタを除く加盟25カ国が参加し、防衛同盟への一歩を踏み出します。防衛協力は1950年代の試みが頓挫後、停滞してきただけに統合推進の決意を示す成果です。
参加国が、これまでは加盟国ごとに進めてきた兵器の調達や開発に共同で取り組んだり、訓練や後方支援での連携を深めたりして、欧州域内の防衛力を高める狙いです。
EU加盟国の大半は(NATO)北大西洋条約機構に加盟し、これまで欧州の防衛は主にアメリカに大きく依存するNATOが担ってきました。EUはそれを補完し、欧州が独自に防衛力を高める役割をPESCOに担わせたい考えです。EU首脳らはPESCOの発足を「歴史的」と呼んで歓迎しました。
EU内の団結を強化
2017年は、EUの原点となる1957年のローマ条約締結から60周年です。60周年にあたり、イギリスを除くEU27カ国は今年の3月、ローマで首脳会議を開き、将来像を描いた「ローマ宣言」を採択しました。トゥスクEU大統領は「統合するかしないかの2択しかない」と結束を呼び掛けました。
宣言の目玉は、意欲のある一部の国だけが先行して統合を深める「マルチスピード構想」です。先行統合の分野は、防衛や雇用政策などが対象になるということです。そして、EUは、イギリス離脱後のEU27カ国の統合進化に向けた5つのシナリオを盛り込んだ白書を公表しました。柱は一部の加盟国が先行して統合を深められるよう統合スピードを多様化するシナリオです。これは、EU内の団結強化につながると期待されています。
難民・移民危機やテロ対策では、EU加盟国の足並みの乱れで有効策を打ち出せないにもかかわらず、EUは自らの威信回復とEU内の団結強化への取り組みで一定の成果を収めているといえるでしょう。