5年目に入ったシリア内戦を振り返る

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シリアで内戦のきっかけとなった本格的な反政府デモが発生してから15日で5年経ちました。

北アフリカから中東へと広がった"アラブの春"はシリアへも及び、政府への大規模な抗議デモが繰り返されています。2011年3月、政府軍と反政府勢力との衝突で最初の犠牲者が出たことをきっかけに双方の対立が激化し、ついには紛争となってしまいました。5年を経過した現在もなお収束の兆しが見えていません。

深刻な被害

国連によりますと、アサド政権の弾圧や衝突などによる死者数は27万人を超え、国外に逃れた難民は480万人以上にのぼっています。シリアは東西文明が交わる場所に位置し、世界的に有名な遺跡が数多くありますが、国連は2014年12月、衛星写真を分析した結果、シリア国内で6か所の世界遺産を含む290の歴史的建造物が被害を受けていると発表しました。

その半数近くがアレッポに集中しています。内戦が長引くことにより、シリアは完全に破綻国家となり、国民の大多数が困難状態に陥っています。そして、シリア経済も深刻な被害を受けています。専門家によりますと、今年3月末、同国のインフレ率は27.7%になる見通しです。

他の国々に波及している

シリアの内戦は自国だけでなく、世界的にも影響を及ぼしています。先頃、世界銀行は、シリア内戦による同国と周辺国のトルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプトへの経済的な影響は生産量にして「350億ドル近く」に上るとし、さらに、これは2007年の物価を基にすると、シリアにおける2007年のGDP=国内総生産に相当する額だと述べました。隣国ヨルダンでは、63万人以上のシリア難民の流入で、1年あたりの財政負担は同国GDPの6%に当たる25億ドル(約2900億円)に上るということです。報告書は、周辺国はどこもシリア内戦のために膨大な財政圧力に直面しているとの見方を示しいます。

平和に向けた交渉

シリアの内戦終結を目指す和平協議は、スイスのジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で14日、およそ1か月ぶりに再開され、仲介役の国連のデミストラ特使とアサド政権側の代表のジャファリ国連大使が会談しました。会談のあと、デミストラ特使は「とても有益な会談で、さまざまな論点を明確にすることができた」と述べ、新たな行政機構の制定などを盛り込んだ安保理決議に従って協議を進めていく考えを強調しました。

一方、ジャファリ大使は「われわれはシリア人どうしで、シリアのリーダーシップのもと話し合いに参加するが、国際的な内政干渉や前提条件は受け入れない」と述べ、協議に協力はするものの、反政府勢力側がアメリカやサウジアラビアなどの支援の下で主張するアサド大統領の退陣は受け入れない考えを改めて強調しました。デミストラ特使は15日、反政府勢力側と会談を行い、政権側とは再び16日に会談を行う予定ですが、双方の主張の隔たりは大きく、協議は難航が予想されます。

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