NATO北大西洋条約機構は10月26日と27日の両日、ブリュッセルの本部で国防相理事会を開き、ロシアに対する抑止強化のため、ポーランドとバルト3国に新たに配置する多国籍部隊の具体策を協議しました。当初、アメリカ、イギリス、ドイツとカナダの4か国が主導する計画でしたが、ロシアの脅威に対抗し、フランスやイタリアなど新たに11か国が参加する4千人規模の部隊展開になります。
NATOの軍事演習
NATO軍備増強
新部隊は来年6月には態勢が整う見通しです。これは冷戦以降で最大となるロシア国境沿いの軍備増強になります。また、26日、イギリスのファロン国防相が、800人規模の部隊をエストニアに派遣すると発表したほか、来年には、4カ月にわたってルーマニアに空軍のタイフーン戦闘機を派遣すると明言しました。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、26日の記者会見で、「ロシアは軍事力の近代化を進め、それを行使する意欲を強めており、NATOはこれに対応する」と述べて、ロシアを念頭に抑止力の強化を進める考えを改めて強調しました。
NATO・ロシア 軍拡競争か
一方、ロシアは過去2カ月間で核軍縮に関するいくつかの合意を停止する一方、ポーランドとリトアニアに挟まれた自国の飛び地カリーニングラードに核搭載可能なミサイルの移動を開始しており、NATOによる来年の軍配備の象徴的な意味合いが一段と増しています。
ロシアと西側諸国との間の関係は、90年代初頭の冷戦終結以降、最悪となっています。クリミア併合とそれに続く西側の報復措置を受け、緊張はすでに高まっていましたが、米ロ仲介によるシリア停戦の破棄と、米大統領選を妨害するためロシアがサイバー攻撃を行ったとするアメリカの非難は、東西関係の急激な悪化を露呈しています。一方、ロシアのプーチン大統領は西側諸国の非難に反論しています。ロシアが欧州で軍事的計画を持っているという主張は「ばかばかしい」としています。
しかし、NATOのストルテンベルグ事務総長は、今回の追加配備は対立を挑発するためではなく、抑止が目的だと説明しました。同氏はさらに、緊張が高まってはいるものの、NATOはロシアを脅威だと考えていないと付け加えました。
政治アナリストによりますと、NATOとロシアの緊張が高まっていることは、軍拡競争へと発展する可能性は高くないですが、それが両方の利益、特に、地域の平和・安定に悪影響を与えているのは間違いではありません。