アメリカのオバマ政権はミャンマーに対して軍事政権時代から科してきた経済制裁をおよそ20年ぶりに全面的に解除しました。米財務省が発表した声明によりますと、同省外国資産管理局が麻薬関連でミャンマーに科した制裁などを除き、経済、金融制裁がすべて解除されました。これは、両国関係の改善にとって、歴史的な意義を持つ動きと見られています。
オバマ大統領は9月にミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問がアメリカを訪問した際、制裁を解除する意向を示していました。経済制裁の解除と共に、ワシントンはネピドーとのパートナー関係を樹立したい希望を表明しています。
関係正常化プロセス
アメリカは、ミャンマーの軍事政権が民主活動家への弾圧を続けていたことを理由にして、1988年から、ミャンマーへの制裁を始めました。クリントン政権時代の1997年、ミャンマーの軍事政権による人権抑圧に対抗する措置として制裁を強化しました。同年、ミャンマーへの投資禁止令を、そして、2003年、ミャンマーからの輸入禁止令を敷きました。
また、ブッシュ政権時代の2007年も、ミャンマー制裁を強化することに関する政令が出されました。しかし、ミャンマーのテインセイン政権が発足した2011年から、前向きな動きが出てきました。したがって、2015年のミャンマー総選挙で、スーチー氏が率いるNLD=国民民主連盟が勝利し、新政権が発足して民主化が進んだことから、アメリカは制裁解除に踏み切りました。
今年9月14日、ホワイトハウスで、オバマ大統領はスーチー国家顧問兼外相と会談しました。会談後、記者団に対し、「我々が科していた制裁を解除する用意がある」と表明しました。
ミャンマーでの影響力向上
アナリストらによりますと、中国がミャンマーとの関係強化に力を入れている背景の中で、アメリカがミャンマーへの制裁解除を決定することはミャンマーでの影響力を高めたい意向を示すものです。アメリカ訪問の前に、スーチー国家顧問は中国を訪れ、その際、「国際情勢の変化にもかかわらず、中国との関係の強化に力を入れていく」と再確認しました。
こうした中、アメリカはミャンマーでの影響範囲を拡大せざるを得なくなっています。アジア太平洋地域における中国との影響力争いには、経済、政治、軍事などの分野でのミャンマーとの長期的かつ良好な関係がアメリカにとって有益なものとしています。
制裁解除の動きは、大統領としての任期が残り数カ月となったオバマ氏がアジア回帰政策の総仕上げを目指すなかで出てきました。一方のスーチー氏は、国内の民族紛争を是正する動きをみせているほか、巨大な隣国で最も重要な貿易相手国でもある中国との関係改善にも動いています。
これらの角度から見れば、今回のアメリカ政府の決定は同国に対してもミャンマーに対しても有益だといえるでしょう。