アメリカのオバマ大統領は2月23日、キューバのアメリカ軍グアンタナモ基地内にあるテロ容疑者の収容施設いわゆるグアンタナモ収容所を閉鎖する計画を発表しました。これはオバマ氏が任期終了まで急いでいるものですが、野党の政治家が反発していることから、難航が懸念されています。
(写真:ロイター)
グアンタナモ収容所は、ブッシュ政権が2001年9月11日に起きた同時多発テロの後、「テロとの戦い」で拘束した人物を収容するためにキューバにあるアメリカ軍基地に2002年に設けたものです。ブッシュ政権時代には、約800人が収容されました。適正な手続きをせずに拘束した容疑者を収容したことや、顔に大量の水を注ぎ息ができない状態にする「水責め」など拷問とも見なされる過酷な取り調べが行われたことなどから、アメリカの人権侵害の象徴となり、国際社会から強い批判を受けました。
国家安全保障分野の優先課題となる閉鎖
オバマ大統領はホワイトハウスで演説し、「この問題を次期大統領に引き継ぎたくない」とコメントし、公約である2017年1月までの就任期間中の閉鎖を目指す考えを示しました。オバマ氏は「グアンタナモの拘束施設は、私たちの国家安全保障に寄与しておらず、むしろ損なっている。テロリストとの戦いにおいても逆効果だ。
テロリストたちはこの施設を、兵士募集のプロパガンダとして利用している」などと主張しました。さらに、収容所の運営に莫大なコストがかかっていることや、同盟国に対しても悪影響を及ぼしていることにも言及し、「この問題を次期大統領に引き継ぎたくはない」として、任期切れ前の閉鎖を目指すと宣言しました。
アメリカ国防総省が今回発表した計画によれば、グアンタナモに現在収容されている91人のうち、今後数カ月間で35人前後を第三国に移送し、他はアメリカ本土の収容施設に移送します。また、最大約4億7500万ドルを投じて国内に施設を建設・改築する計画です。
共和党の反発
しかし、野党・共和党はこの計画に反発しています。収容者のアメリカ本土への移送については、治安上の懸念から共和党主導の議会で反対する声が多数を占めています。
共和党のマコネル上院院内総務は23日、「アメリカ国内へのテロリスト移送には超党派の意思として反対を表明してきた」と指摘しました。ライアン下院議長も「安全な移送」に疑問を表明。計画に反対する意向を改めて表明しました。
また、下院外交委員会のロイス委員長は同日、移送の詳細計画の公表を義務付ける法案を下院に提出しました。現在は議会を除いて非公表となっている移送計画を公開させ、反対論を促す狙いがあります。
22日には、指名争いに出馬しているルビオ上院議員を含む同党4議員が同海軍基地のキューバへの返還を禁じる法案を提案しています。
こうした中、アナリストらは、「グアンタナモ収容所の閉鎖はオバマ氏の最初の大統領選挙の選挙公約であるが、オバマ氏の就任中に閉鎖が実現するかどうかについては不透明な状態である」との見方を示しています。