日本を訪問中のカーター国防長官の歓迎式典(写真:The Japan Times)
この間、アメリカのアシュトン・カーター国防長官は日本と韓国を歴訪しています。国防長官就任以来初のアジア太平洋地域への訪問は同盟国との国防関係、及びアメリカのオバマ大統領政権のアジア太平洋地域に軸足を移す「リバランス政策」を改めて強調することが狙いであると見られています。
イラクとシリアにおけるイスラム過激派の台頭、イエメンでの民事戦争発生、ウクライナ東部衝突へのロシアの介入などが続く背景の中で、アメリカはアジア太平洋地域における自国の地位を改めて強調してゆく必要があると認識しています。そのため、今回のカーター国防長官による日本と韓国歴訪はアジア重視を狙う事です。
同盟関係の強化と近代化
日本を訪問したカーター国防長官は中谷防衛相と会談し、ガイドライン改定に向けた日米間の協議を加速することや、沖縄県の米軍普天間基地の移設を進めることなどを確認しました。カーター長官は会談後の共同会見で、「新ガイドラインで日米関係、同盟関係はさらに変わることになる。米軍と自衛隊が切れ目なく協力する機会が増える」と発言しました。その上で「直面する幅広いチャレンジに、アジア太平洋、世界中で対応していくことが可能になる」と語りました。ガイドラインの改定は18年ぶりです。来る4月下旬にワシントンで予定される安倍晋三首相とオバマ大統領の首脳会談を前に外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開き、作業を完了させる方向で調整しています。
一方、韓国の訪問では、韓国政府は、韓国の安全保障に対するアメリカ側からの公約を受けることになります。その他、双方は、朝鮮民主主義人民共和国を巡る問題の解決策について討議します。
カーター長官は、東京と韓国のソウルを訪問した後、アメリカハワイ州で米太平洋軍司令官と会談する予定です。そして、5月に再 びアジアを訪れ、シンガポールで開催されるアジア安全保障会議に出席します。
アメリカ国防総省は声明で、カーター長官による2か月間で2度のアジア訪問は「同地域における同盟国との防衛関係を確かめ、リバランス政策の中心的構想を作り上げる」だろうとしています。
米国の戦略均衡作り
オバマ大統領はアメリカの戦略におけるアジア・太平洋地域の優先順位を上げよう
としていますが、アメリカ政権はIS=イスラム過激派組織「イスラム国」の台頭など中東各地で発生している混乱の対応に追われています。
カーター国防長官は、歴訪の前に、アリゾナ州でアジア重視戦略について講演した際、アジア太平洋重視政策の重要性を指摘し、最新鋭のズムウォルト級ステルス艦を含め、高度な軍事技術を備えた装備をアジア太平洋地域に重点的に配備する方針も強調しました。また、カーター氏は大筋合意に向けた交渉が続いているTPP環太平洋戦略的経済連携協定についても、「米国がアジア太平洋地域への関与を続けていくこ とを強調し、米国の国益や価値を反映した国際秩序の推進に役立つ」と言及しました。TPP合意は米国の安全保障との関連でも、「空母1隻と同じぐらい重要だ」と述 べました。
アメリカと同盟諸国との国防協力に関する方向の変更、及び貿易協力推進は、アメリカとアジア地域との連携につながることでしょう。