来年1月に任期を終えるアメリカのオバマ大統領は12日、アメリカ議会で、およそ1時間にわたって、内政・外交の施政方針を示す最後の一般教書演説を行い、雇用の改善や、医療保険制度改革の実現など、就任以来7年間の成果を強調しました。
(写真:ロイター)
オバマ大統領は、任期中最後となるこの一般教書演説の中で、安全保障面の優先課題として、過激派組織IS=イスラム国の壊滅を挙げる一方、アメリカが過度な負担を負わず、同盟国や友好国と分担して、世界の安全を確保したいという考えを示しました。
前回選挙戦の方針を再確認
オバマ氏は「チェンジ」という2008年の選挙戦における自らの方針を振り返った上で、この7年間収めてきた業績を取り上げました。経済面で、2015年のGDP=国内総生産の2%増加や、失業率の低下、医療保険の恩恵など自らの経済政策に胸を張りました。
外交・安全保障の面で、オバマ大統領は、イランの核開発問題の最終合意や、54年ぶりのキューバとの国交回復、さらに地球温暖化対策の国連の会議COP21の合意などを挙げました。
一方で、国際社会でのアメリカの指導力が失われたと指摘されていることに対して、「敵が強くなり、アメリカが弱くなっていると言われるが、アメリカ軍は歴 史上、最強だ。重要な懸案について、世界の人が頼るのは、中国やロシアではなくアメリカだ」と反論しました。
共和党批判
オバマ大統領は、国内でわき上がる移民や難民、イスラム教徒への排外主義的な発言を「間違っている」と糾弾するなど、11月の大統領選を意識して野党・共和党を激しくけん制しました。
具体的には、共和党の候補者指名争いで支持率首位を走るドナルド・トランプ氏がメキシコ移民を「麻薬や犯罪を持ち込む。強姦(ごうかん)犯だ」と侮辱し、イスラム教徒の一時入国禁止を訴えていることを念頭に批判しました。
また、IS掃討作戦で「じゅうたん爆撃」を主張しているテッド・クルーズ上院議員についても、テロや紛争などへのアメリカの対処は「強気の発言や、市民へのじゅうたん爆撃」を超えるものが必要だと切り捨てました。
米世論の反応
オバマ大統領の一般教書演説について、ウォール・ストリート・ジャーナルは過激派組織IS=イスラミックステートなどによるテロが世界各地で相次ぐ中、「大統領が提示した楽観的な見方は、多くのアメリカ人が感じている気分とは対照的だった」と指摘しました。
また、ニューヨーク・タイムズはオバマ大統領が一般教書演説で「私が大統領として後悔しているのは、党派間の悪意や疑念が改善するよりもむしろひどくなったことだ」と述べたことをあげて、「希望と変革をかかげ、政治そのものを変えると誓ったオバマ大統領だったが、最後の一般教書演説でその実現には遠く及ばなかったことを認めた」と論じています。
一方、ABCテレビは「オバマ大統領がこれほど政治的な脚光を浴びることはもうないかもしれないが、彼はその機会を使って国民の注目を自身の成果に向けさせ、遠い昔に消え去った情熱を取り戻そうとした」と分析しています。