スペインの政治危機

(VOVWORLD) -スペイン北東部カタルーニャ自治州の分離独立の是非を問う住民投票は1日、即日開票され、州政府は二日未明、賛成票が9割を占め「独立国になる権利を得た」と発表しました。
スペインの政治危機 - ảnh 1 写真提供:Getty

この結果を受けて州政府は、独立宣言に踏み切る構えを見せています。しかし、スペイン政府は、住民投票は、憲法違反だとして対抗措置も辞さない姿勢で、カタルーニャ州政府は緊張緩和に向けて国際社会に仲介を求めています。

長期的な政治危機が予測

1日行われたスペインからの独立の賛否を問う住民投票について、州政府は暫定的な集計結果として独立賛成が圧倒的多数の90%以上を占めたと発表しました。投票翌日となる2日、記者会見をしたプチデモン州首相は住民投票は困難を乗り越えて実施されたとして「われわれは政治的な決断をする責任がある」と強調し、投票を受けて一方的に独立宣言に踏み切る構えを見せました。一方で州政府が独立を宣言する事態になれば、スペイン政府が州の自治権を停止する強硬措置に踏み切る可能性も指摘されており、緊張が高まっています。そのうえで住民投票で警察と住民が衝突し、多数のけが人が出る事態になったことなどを踏まえ、「現在の状況では第三者による国際的な仲介が必要だ」と述べ、対立が深まるスペイン政府との緊張緩和に向けて国際社会に仲介を求めました。独立を支持する主要労組は3日、州内全域で大規模ストを実施。労組は投票を阻止するために中央政府が踏み切った警官隊の実力行使を「自由と人権の重大な侵害」と批判し、反発を強めています。しかし、スペイン政府は住民投票は憲法違反で無効だとする姿勢を崩しておらず、対抗措置も辞さない中、州政府の要請が事態の打開につながるかは不透明な情勢です。

独立を求める理由

カタルーニャはバルセロナ県、ジローナ県、リェイダ県、タラゴナ県の4県からなり、人口は750万人で、GDP=国内総生産は3億ドルを超え、スペインのGDPの20%、輸出入額の20%以上を占めています。カタルーニャ地方には独自の言語や習慣があり、大幅な自治権限がすでに与えられています。しかし、スペインで最も富裕な地方の一つであるカタルーニャでは、中央政府に持っていかれる税収が多すぎると感じる住民が多数います。先月、デモ参加者の数の推計にはばらつきがあります。デモ主催者が100万人を超えたとした一方、地元メディアはスペイン政府関係者の話として、主催者の推計よりも大幅に少なかったと報じました。2008年世界金融危機後の失業率の高止まりなど、低迷するスペイン経済の問題も独立を支持する空気を後押ししています。

EUの安全保障にも影響

カタルーニャ自治州で独立賛成派が多数を占めた一日の住民投票を巡り州政府と中央政府の対立が深まっている問題で、欧州委員会は2日、双方に対話を呼びかけました。ほかにも分離独立問題を抱える加盟国があるだけに、EUはこれまで、カタルーニャの動きをスペインの内政問題だとして、積極的な発言を避けていました。欧州委の報道官が二日に発表した声明は「全ての当事者に、すみやかに対立から対話へ移行することを求める」としました。プチデモン州首相が同日に求めた国際的な仲介には、関わらないとも表明しました。住民投票では、断固阻止を目指した中央政府が投票所の閉鎖などに全国の警察官を投入しました。住民との衝突で八百人以上の負傷者を出し、国際社会の非難が高まっています。

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