7月15日に発生したクーデター未遂後、トルコ政府は情勢の安定化のために尽力しています。エルドアン大統領は、「国民の力ほど強い権力はない」というスローガンを掲げ、国民の意志を活用して困難な任務とみられる政権改革を進めています。
7月15日夜、トルコ軍の一部勢力が与党・公正発展党の党本部に突入した他、国営テレビを占拠し、クーデターを行いました。イスタンブールや首都アンカラの路上には兵士の姿が見られ、戦闘機が低空飛行しました。クーデターにより、およそ300人が死亡、2000人以上が負傷しました。損害額はおよそ1000億ドルに上るとされています。
政権改革
このクーデターを鎮圧した直後、エルドアン大統領は政権の改革に着手しました。大統領は7月20日、3か月間の非常事態宣言をしました。事件の背後にいる「テロリスト」組織を追い詰めて排除していくとも表明しました。特に、103人の軍将校や、2800人の兵士・士官、2800人の裁判官を含めおよそ7500人が逮捕されたほか、8000人の警察官が免職となりました。
(写真:TTXVN)
また、大統領は反乱者に対しては死刑判決も辞さない強硬な姿勢を示しています。トルコ政府の強硬な措置は西側諸国とトルコの同盟国の深い懸念を引き起こしています。ドイツの高官は19日、トルコに「深い断絶」が生じており、ドイツ国内に多数居住するトルコ人の社会が不安定になる懸念があると語りました。
バイエルン州のヨアヒム・ヘルマン内相は、「エルドアン大統領支持者と反対派の間の暴力的な対立が激化する危険性はドイツでも高まっている」と述べました。しかし、エルドアン大統領はこの姿勢を崩さず、いわゆる「妥協しない民主制度」を守る決意を表明しています。
クーデター後の課題
現時点においても、誰がこのクーデターの首謀者なのかが大きな疑問と見られています。トルコ政府は、アメリカ在住の宗教家・社会運動家のフェトゥラ・ギュレン氏が反乱の首謀者だと主張しており、粛清されるのはギュレン氏の支持者たちだとしています。これに対し、ギュレン氏は関与を全面的に否定しています。トルコのユルドゥルム首相は、「ギュレン氏がテロ組織を率いている」と語りました。同首相は国会で、「彼らを根絶する」と述べました。
一方、ギュレン氏は、クーデター未遂の黒幕だという主張は「ばかげている」と反発し、「アメリカ政府に対しては、政治的復讐のために送還手続きを乱用するようなことは拒否すべきだと訴えたい」と文書で述べました。他方、トルコの国営アナトリア通信などによりますと、エルドアン大統領は8月2日、「西側諸国はテロを支持し、クーデターの側に回っている」と演説し、クーデター未遂事件後の欧米諸国の対応を非難しました。
こうした中、アナリストらは、「今後、トルコがどのようになるかはまだ分からないが、トルコだけではなく、他の国々も今回のクーデター未遂から教訓を引き出す必要がある」との見方を示しています。