トルコ軍のイラク派兵、地域の緊張をエスカレート


トルコ政府は、過激派組織(IS)「イスラム国」の拠点、イラク北部モスルの近郊に、戦車などを装備した部隊を5日までに派遣しました。ISと戦うイラクのクルド地域政府の部隊を訓練する目的としています。しかし、事前に知らされていなかったイラク政府は、主権の侵害だとして強く反発しています。トルコ軍の派遣は両国の関係に悪影響をもたらすだけでなく、地域の緊張をエスカレートさせる恐れがあります。

ロイター通信などによりますと、トルコ政府はモスル北東約30キロのバシカに戦車20~25輌を擁する150人規模の部隊を派遣しました。一方、トルコの新聞「Sabah」は、モスル近郊に、多くの戦車と大砲を装備した約1700人の部隊が派兵されていると報じています。

トルコ軍のイラク派兵、地域の緊張をエスカレート - ảnh 1
トルコ軍の戦車(写真:petrotimes.vn)

トルコ・イラク関係ギクシャク

トルコ側によりますと、同国は今年3月以降、「イスラム国」に対抗する目的で組織されたスンニ派義勇兵を訓練するため、モスル近郊のキャンプに軍事教官や護衛部隊を派遣しています。トルコのダウトオール首相は、宿営地はISと戦うイラク側の義勇兵を訓練するため、イラク政府の了解のもと設置されていたもので、今回の派遣は通常の部隊運用の一環にすぎず、新たな地上作戦の準備ではないと説明しています。

しかし、イラクは、必要以上の規模の部隊がイラク政府の承認を得ないで派遣されているなどと非難しています。イラク国内では、トルコが人員や物資を増やしてキャンプの拡張を進めているとの指摘も出ていました。

イラク政府はバグダッド駐在のトルコ大使を呼び出し、「イラク政府は許可していない」と抗議しました。イラクのアバディ首相は6日、トルコ軍が48時間以内に撤退しなければ、国連安全保障理事会の緊急招集など「あらゆる選択肢を検討する」と述べました。

これを受け、トルコのダウトオール首相はイラクのアバディ首相に書簡を送り、「懸念が和らぐまで、これ以上部隊を派遣しない」と伝え、イラクへの配慮を示しました。しかし、既に駐留している部隊の撤収には応じないとみられます。

中東地域の緊張をエスカレート

トルコは、国内のクルド系非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)とは武力衝突が続ていますが、イラク北部3州のクルド地域政府とは石油を輸入するなど良好な関係を維持しています。宗教面では、トルコの国民はほとんどイスラム教のスンニ派に従事しており、クルド人の多くもスンニ派の教徒です。一方、イラク中央政府を管理しているのはシーア派です。

政治アナリストによりますと、今回のトルコ軍の派兵は同国の新しい外交戦略の一つであるとしています。これは、クルド人が居住しているイラク北部をトルコ領土に合併する狙いではないかと見ています。また、中東地域においてトルコの威信と影響力を拡大する戦略を示しています。

トルコ軍がロシアの戦闘機を撃墜し、ロシアとの緊張を高めている背景の中で、イラクへの派兵は、地域の緊張をエスカレートさせるとの懸念が出されています。

ご感想

他の情報