トルコのエルドアン大統領は9日、先月の軍部によるクーデター未遂後初の外遊でロシアを訪問し、プーチン大統領と会談しました。今回の訪問は両国関係の改善にとって重要な意義があるとされています。会談で、両首脳は、ロシア軍機撃墜で冷え込んだ関係の正常化に向け、貿易やエネルギー分野の関係強化を表明しました。
(写真:AFP/ TTXVN)
両首脳は会談後の共同記者会見で、ロシアからトルコへ天然ガスを運ぶパイプライン計画について近いうちに実現するとの見通しを示しました。プーチン氏はトルコに科した経済制裁を段階的に解除すると表明しました。トルコ側はロシアによるトルコ初のアックユ原発の建設工事を中断していましたが、エルドアン氏は再開に積極姿勢を見せました。
訪問の背景
トルコでは、先月15日にクーデター未遂が発生し、エルドアン大統領はアメリカや、EU=欧州連盟に対する落胆を隠さず、欧米諸国にはトルコがこれまで以上にロシアに接近するのでは?という危惧が広がりました。
プーチン大統領はクーデター未遂後にエルドアン大統領に最初に電話をかけて支援を表明した首脳の一人だった上、その後にエルドアン大統領が乗り出した粛正についてEU首脳らが示したような懸念は表明していないのです。
今回の首脳会談は、ロシアが求めていたロシア軍機撃墜に対する謝罪をエルドアン大統領が6月に書簡の形で送ったことがきっかけとなって実現し、ロシア側も関係修復へ動き始めたものです。エルドアン大統領はクーデター未遂事件後の反政府勢力への弾圧など欧米諸国から非難を浴びるなか、ロシアへと接近する形となりました。
共通利益のための関係正常化
実際、ロシアとトルコは地域内で重要な役割を果たしており、互いに重要なパートナーでもあります。このため、両国関係正常化は差し迫った問題と見られています。首脳会談で、両大統領は経済面を中心に関係正常化へ向けて大きく踏み込む一方、立場が異なるシリア問題では妥協点を探る協議を重ねる見通しとなりました。
シリア紛争ではロシアがアサド政権を、トルコは反体制派を支持しています。両首脳は、情報を交換し解決策を探るため、外相や情報機関のトップらと協議しました。一方、経済・技術面では2019年までの協力推進計画策定で合意しました。
プーチン氏は「我々は最大限まで関係を回復させる」と強調しました。両国間の経済協力において、観光は重要な分野と見られています。特に、観光がGDP=国内総生産の4・5%を占めるトルコがロシアの制裁措置で深刻な損害を受けている背景の中で、今回の関係改善が大きな利益をもたらすことはは間違いないでしょう。
アナリストらによりますと、トルコへの西側からの圧力はプーチン大統領とエルドアン大統領の和解の理由として働き、そして、プーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の連合は本質的に世界のパワーバランスを変える力を持っているとしています。