多くの不安定要素を抱えている中東地域でのロシアの影響力が日増しに高まっていることは明らかです。アナリストらによりますと、ロシアが現在、この地域で行っている外交的・軍事的活動はその証と見られています。
シリアでのIS空爆作戦に参戦しているロシア戦闘機
シリアでの素早い軍配備はロシアの中東回帰の始まりと見なされています。過激派組織IS=イスラム国に対する空爆作戦へのロシアの参加は戦闘局面の変化に寄与し、ISに多大な損失をもたらしていると評されています。次のステップはトルコや、イランとの関係を改善することです。
中東でのロシアの影響
オバマ政権は中東に深く関与し続けていると述べますが、地域の見方は、アメリカが撤退し、同盟国の保護者として信用できないというものです。これはロシアが中東での影響力を高めることに役立っています。ロシアがシリアに戦闘機と戦車を派遣したことで、アサド政権の崩壊が回避されるようになりました。
また、シリアに軍を配備することで、西側に制裁解除を求めるロシア政府に価値ある交渉カードが与えられます。ロシア・アメリカ軍関係者のハイレベル対話は2014年3月のクリミア併合以降、凍結されていましたが、シリアでの軍配備を受けてアメリカはすでに、その再開を余儀なくされています。シリアの後、トルコとの関係正常化はロシアの中東政策の柔軟性を示すものといえます。
プーチン大統領は7月のトルコのクーデター未遂後にエルドアン大統領に最初に電話をかけて支援を表明した首脳の一人だった上、その後にエルドアン大統領が乗り出した粛正についてEU首脳らが示したような懸念は表明していないのです。また、イランも親ロ姿勢を示しています。
イランが今月中旬、ロシアにイランの空軍基地の使用を許可したことはその証と見られています。さらに、ロシア、イラン、アゼルバイジャンの3カ国首脳が今月8日、アゼルバイジャンの首都バクーで会談したこともロシアの影響力の高まりを示すものと評されています。
この会談で、プーチン大統領は「3カ国がいずれも周辺に紛争地や不安定化した地域を抱え、テロの脅威にさらされている」と指摘し、各国内における過激派勢力の活動や、武器の流入を食い止めるための情報共有を呼びかけました。
西側の警戒心
ロシアの迅速な中東復帰、特に、ロシアとイラン、トルコがシリア問題を巡り、それぞれ急接近していることはアメリカを含め西側諸国の警戒感を引き起こしています。中でも、トルコのロシアへの急接近は、NATO=北大西洋条約機構メンバーとしては異例です。また、ロシアによるイラン空軍基地の利用も予断できないものとされました。
これについて、アメリカ国務省のマーク・トナー報道官は、「残念だが意外ではない」とコメントしました。過激派組織「イスラム国」打倒に向けたロシアとの協力合意の可能性について質問を受けたトナー報道官は、「ロシアとイランの協力関係が合意の可能性を除外するわけではない」としました。
アナリストらは、「今後、ロシア・トルコ・イラン間の関係の動きは西側諸国の特別な関心を集める」と予想しています。そして、「プーチン大統領の指導のもと、ロシアは、世界のパワーバランスを取り戻すプロセスにおいて大きな進展を遂げている」としています。