ウクライナ情勢をめぐり、アメリカやEU=欧州連合がロシアに対して経済制裁に踏み切りました。それに対してロシアも、報復措置として制裁発動国からの農産物などの輸入禁止を発表しました。欧米とロシアで経済制裁の応酬となっていることは当事国だけでなく、全世界にマイナス影響を与えるのは事実です。
赤の広場
2014年以前、ロシア経済は安定していましたが、西側の経済制裁や原油価格急落の影響により、ほぼ景気後退入りしました。統計によりますと、CPI=消費者物価指数は前年比で8%上昇し、そして、インフレ率がおよそ10%に達しています。これはロシア通貨ルーブル安による影響と見られています。
制裁の逆効果
欧米諸国の経済制裁がロシア経済にマイナス影響を与えているのは明らかですが、制裁実行国も損害を受けています。ロシアは地理的にヨーロッパとアジアにまたがっている巨大な領土を持つ国です。欧州諸国の天然ガスのロシアへの依存度は EU全体で 48.5%になっています。
このような状況下に出された制裁措置により、ロシアの EUへのエネルギー資源の輸出が急激に減るようなことになれば双方共に打撃を被ることは自明です。また、アメリカや、EU、カナダ、オーストラリア、ノルウェーを対象とするロシア政府の農産品・原材料・食料品の輸入禁止措置により、EUは約120億ユーロの損失を受けるとも指摘されています。
さらに、ロシアへの輸入制限措置と通貨ルーブル安の減少により、食肉や乳製品の値上げは避けられない状態です。それに加え、ロシア側はウクライナの航空会社がロシア上空を通過することを禁止すると発表しました。
ウクライナとアゼルバイジャン、グルジア、アルメニア、トルコとの便が対象となっています。これらの動きにより、双方のにらみ合いの影響範囲が拡大しており、全世界に影響を及ぼすと懸念されています。
世界的影響
ロシアは世界の成長センターと見られているアジアに近いというメリットを有しており、市場として、資源供給国として、その重要性が長期的に大きく低下することはありません。
その重要な役割から見れば、欧米諸国の制裁や、ロシアの対抗措置による影響は当事国だけでなく、ロシアの隣国をはじめ、アメリカや、EU諸国、アジア諸国にも及ぼされるといえます。
ロシアと欧米の関係の修復は難しいかもしれません。そして、その主な原因はウクライナ危機がまだ解決されていないことなどとされています。この状況が長引けば、世界経済も後退入りすると懸念されています。