人民元の切り下げ、その後ろは


中国人民銀行(中央銀行)は13日、人民元の取引の目安となる対ドル基準値を3日連続で引き下げました。元の切り下げ幅は合計で約4.5%に達し、異例の措置となりました。輸出や消費の低迷、製造業の不振による成長鈍化(どんか)など肥大(ひだい)した中国経済の(かか)える不安材料が「元安ショック」となって東京を含む海外の市場に()()し、動揺(どうよう)を広げています。

世界各国の投資家と政策立案者はまだ、これは市場主導の為替レートに向けた(この)ましい動きなのか、それとも競争的な通貨切り下げなのかと頭を悩ませていました。

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低迷している経済・輸出の回復へ

この異例とも言える切り下げの背景にあるのは、ずばり中国政府の「危機感」です。中国側は「経済は安定しており、今回の措置は、あくまで市場の相場に基づくものだ」と主張、元安への誘導(ゆうどう)を否定しています。しかし、中国では、輸出の不振(ふしん)に加え、不動産市場などの低迷から国内消費も()(なや)んでいます。中国政府はこれまでも内需(ないじゅ)刺激策を実施してきましたが、景気回復に至っていないのが現状で、今回は、景気のもう1つのけん引役だった輸出に手をつけた格好(かっこう)です。

そのため、多くの経済専門家によりますと、現段階で人民元安を正当化する根拠は強いです。ドルに連れてその他多くの通貨に対して上昇することで、中国は競争力を失い自国経済が著しく弱くなりました。資本流出も為替レートに下落(げらく)圧力をかけ、元安を防ぐために介入が必要になったとしています。

人民元の国際化

今回の人民元を切り下げた理由は景気回復のほか、人民元の国際化でもあります。人民元の国際化を進めている中国が、IMF国際通貨基金が設定しているSDR=特別引き出し権の構成通貨に人民元を採用してもらうことを目指しています。しかし、IMFは先頃、人民元の採用についてすぐに決定できないため、構成通貨の変更時期を延期すると発表しました。

又、IMFは14日に発表した中国に対する年次審査報告書で、人民元について向こう2~3年かけ為替介入を最小限に抑えつつ、実質的な変動相場制に移行するのが(のぞ)ましいと提言(ていげん)しました。対外不均衡(ふきんこう)を是正し、国内の金融政策の自由度を高める必要があるためです。中国は異例のスピードで現行の管理相場制度を見直すよう(せま)られた格好です。

人民元を巡っては、中国人民銀行が元相場を市場実勢(じっせい)に近づけるとして売買の「基準値」を突如(とつじょ)、大幅に引き下げるなどして市場の混乱を招きましたが、IMF担当者は元相場が市場原理にやや近づくことを理由に「歓迎する」との見解を示しました。

しかし、今回のなりふり(かま)わぬ切り下げによって、中国政府の「危機感」が浮き彫りになったわけで、さらなる経済の先行き不安を招く可能性もあり、中国政府は今後、難しい舵取(かじと)りを迫られることになります。

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