イタリアで今月4日、内閣不信任など上院の権限を大幅に縮小する憲法改正の是非を問う国民投票が行われます。改革を進めるレンツィ首相に対する事実上の信任投票でもあります。世論調査では反対派がやや優勢で、否決に終われば、世界的なポピュリズムの台頭を改めて印象付けることになりそうです。
憲法改革に反対するローマ市民のデモ
国民投票の理由
レンツィ首相は2014年の就任以降、高い人気を誇ってきました。しかし景気回復は進まず、失業率も高止まりが続いており、国民の反発が強まってきています。国民投票では上院改革に対する賛否だけでなく、政権への評価も示されることになります。
イタリアの国民投票は、これまで上院と下院が同じ立法制度の権利をもっているのを、レンツィ首相は上院の現行定数350議席から100議席に減らし、上院が持っている下院との同等の立法上の権利を無くして、実質的に下院だけの一院制にするために憲法改正を行うという案の審査を国民に委ねるというものです。この改正によって、政権の安定化と議会制度のスピード化を図ろうとするものです。
リスクが大きい国民投票
問題は、この改正案が否決されると、レンツィ首相の辞任は必至で、総選挙となり、ポピュリズム政党「五つの星」が他党と連携して政権を担う可能性が生まれることです。
先ごろのイタリア各紙掲載の世論調査によりますと、反対派はアメリカ大統領選をはさんで急増し、賛成派を7~12ポイント上回っています。
もっとも大半の世論調査機関は、投票結果がどうなるかはなお予断を許さないとの見方をしていますが、経済専門家によりますと、レンツィ首相が辞任すれば、経営不振に陥っている国内銀行の資本増強努力に水を差す結果になりかねません。また、ユーロ圏に懐疑的な政党の勢力拡大を招く恐れもあります。
イタリアはEU内でイギリスを除きGDPで3位の国です。国民投票が否決されると、それが導火線となってイタリアのユーロ離脱の可能性が浮上して、他のユーロ加盟国にマイナス影響を及ぼすのは必至です。