アメリカのオバマ大統領は20日、アメリカ大統領として88年ぶりにキューバを訪問し、翌日の21日にラウル・カストロ国家評議会議長と革命宮殿で会談しました。オバマ政権は長年のキューバ孤立化政策を転換し、昨年7月に54年ぶりに国交を回復しました。今回の歴史的な訪問は、関係正常化の流れを加速させ、半世紀以上の敵であった両国の関係に新しいページを切り開くと期待されています。
カストロ議長とオバマ大統領(写真:CNN)
歴史的な訪問
この数日、キューバの首都ハバナの目抜き通りには、オバマ大統領の写真や、この訪問をピーアールするポスターがたくさん貼られてあります。また、21日ハバナの中心部で、オバマ氏が姿を見せるとのうわさが広がり、大勢の市民が同氏の登場を待ち受ける騒ぎがありました。キューバとの断交と敵対政策を転換し、約半世紀ぶりの関係正常化に踏み切ったことによる「オバマ人気」が表面化した形です。
21日の首脳会談で、オバマ大統領とカストロ議長は経済分野を軸に正常化の動きを加速させることで一致しました。両国は、農業における共同研究や旅行客の安全確保に向けた枠組みの立ち上げに合意し、文化交流の一環で交換留学も行うことになります。また、環境・海洋保護の分野で覚書を交わしたほか、通信分野での協力でも進展があった模様です。
オバマ大統領は会談後、キューバ人企業家との懇談に参加しました。起業促進はキューバ経済の利益になることを強調して、市場参入を目指すアメリカ企業との連携を促しました。
深い溝も浮き彫り
しかし、両国の間には人権問題について深い溝も浮き彫りになっています。会談後の共同会見でオバマ大統領は、両国関係の焦点の一つであるキューバの民主化や政治的自由の拡大について、「キューバの運命はキューバ国民が決めること」と述べつつも、人権問題で「深刻な違い」が残ることを改めて指摘しました。その上で、今年中にハバナで人権対話を開催することで合意したと明らかにしました。
一方、カストロ氏も両国の関係正常化は「長く複雑な道」との現実的な見方を示しました。アメリカによる経済制裁の緩和は「不十分だ」とも指摘し、真の関係正常化には、禁輸措置の解除とキューバ東部の米海軍グアンタナモ基地の用地返還などが必要だと強調しました。
キューバが経済封鎖の全面解除を強く求めたのに対して、オバマ大統領は権限を握る連邦議会の説得には人権問題の進展が必要だと指摘しました。
今回の首脳会談は歩み寄りが進んでいることの象徴となりましたが、その一方で、長らくしこりとなっている問題の解決には時間がかかりそうであることも浮き彫りとなっています。そして、対キューバ政策は、アメリカの次期大統領の判断次第で、不安定なところもあると見られています。