2015年は欧州にとって不安でいっぱいな一年であったとも言えるでしょう。それは、安全保障の不安定、経済回復遅れ、難民問題を巡って 欧州各国の対応に温度差が見られたということです。
マーティン・シュルツ欧州議会議長は「2015年は、恐ろしいことで始まったが、終わりも恐ろしかった。経済、社会、雇用に関する深刻な危機を引き起こした一年間。この1年間で、欧州各国はかつてない激しい対立」と認めました。
テロ攻撃と移民流入危機の1年間
2015年中に、欧州諸国におけるテロ主義と移民流入は最大の不安定状況をもたらしたことでしょう。フランスでは、2度もテロ攻撃事件が発生しました。首都パリでは1月に新聞社「シャルリー・エブド」が襲われた後、フランスと欧州諸国は常に警戒の姿勢を整えていました。しかし、11月13日、パリで起きた100人以上の死者が出た同時多発テロ事件は無差別に大量の市民が殺されて、大変な恐怖、悲しみとなっています。その直後、一連の欧州各国はテロ対策を強化しました。それらの中に、EU欧州連合内のパスポートなしでの移動を自由にするシェンゲン条約の廃止が主張されたこともあります。また、EU加盟国と欧州議会は、テロ対策として、EUと域外を結ぶ全航空便の乗客情報を収集する「乗客予約記録(PNR)」導入で基本合意しました。EU域内の国境検査も以前より厳しくなっています。
テロ危機を長期的に防止するためには、社会の安定化が最も重要なことであるとみられますが、このことは21世紀前半に最大となる移民危機で深刻な影響を受けているようです。シリア、イラク、アフガニスタンからの難民の波がこの1年間で絶え間なく流入しています。IOM国際移住機関の公表によりますと、今年中に、陸路と海路で欧州諸国に到達した移民や難民の数は100万人を超え、2014年と比べ少なくとも4倍増となっています。しかし、去る12月17日と18日に行われたEU首脳会議では、この最大試練に対応できる何らかの措置で合意できなかったということです。
欧州諸国の亀裂
中東やアフリカから欧州諸国に大量流入している移民や難民への対応をめぐり、EUが「東西対立」の新たな危機に直面しています。EU欧州委員会のティメルマンス第1副委員長は、第2次大戦後最大とされる問題の深刻さを強調しました。EUには、難民の受け入れ審査は域内で最初に着いた国で行う「ダブリン規則」があります。中東・アフリカに近いイタリアやギリシャの負担増に対し、欧州委は5月、人口や経済力などに基づき国ごとに受け入れ人数を割り当て、負担の公平化を図る特別措置を提案しました。今後2年間で両国に到着する難民のうち4万人を対象にするとしました。しかし、難民の受け入れ実績の少ない東欧やバルト諸国を中心とした加盟国は分担の義務化に強く反発しています。
経済回復が遅れ
2008 年の世界経済危機、及び公的債務残高が根本的に解決できなかったのは、欧州経済が停滞状態にあることが主要な要因であると指摘されています。ギリシャやイタリアなどEU諸国は深刻な公的債務残高の圧力に直面する状態です。
2015年も秒読みになりましたが、アナリストによりますと、2016年にも欧州諸国は多くの試練に直面する恐れがあります。それらは、ギリシャやイタリアの経済危機により失業率が高くなること、大量の難民や移民の危険が複雑化になるということなどです。