ブリュッセルの国際空港では天井が落下し、ターミナルビルの前面のガラス窓は粉々に砕けている=DailyMail
ベルギーの首都ブリュッセル近郊の国際空港と中心部の地下鉄の駅で22日、34人が死亡し、230人がけがをした一連の爆発が起き、過激派組織IS=イスラム国が攻撃への報復として犯行を認める声明を出しました。この一連の事件は、フランスのパリで昨年11月に起きた同時テロ事件で、事件に関わったとして捜査当局が国際手配していたベルギー生まれのサラ・アブデスラム容疑者が、ベルギーの首都ブリュッセルで拘束された数日後に、起きました。
なぜベルギーがテロの標的になったのか?
狙われたのは、欧州でも最も重要な場所の一つです。ブリュッセルにはEU=欧州連合とNATO=北大西洋条約機構の本部があり、様々な国際機関や国際企業があります。そして、多くの外国人や市民が行き交う空の玄関口と地下鉄の駅といった重要な拠点、公共輸送機関が標的となりました。国際空港は年間2300万人が利用していることから。国家の威信を揺るがし、外国人や市民に恐怖を植え付ける狙いがあると見られます。また地下鉄の駅はEU本部のすぐそばで、ベルギーだけでなく欧州全体を標的にしたものとも言えます。ブリュッセルのテロを受けて、ロンドンやパリ、フランクフルトなど欧州各国の空港や主要な拠点での警備が強化されました。
もう一つの特徴は、パリ同時テロとの共通点が多いことです。パリ同時テロは市の中心部にある劇場やサッカー競技場など大勢の市民で賑わう都会のいわゆるソフトターゲットが標的となりました。今回も多数の市民を狙った無差別テロでした。また、2つのテロとも過激派ネットワークの存在が指摘されています。
テロの危機
ブリュッセルで起きた一連の爆発事件は欧州におけるテロ攻撃の危機が高いことを改めて示しています。フランスのテロ分析センターによりますと、2000人のフランス人、1600人のイギリス人、800人のドイツ人、及び530人のベルギー人がシリアとイラクの「聖戦」に参加しています。彼らは戦場で実戦訓練と「洗礼」を受け、帰国後に「大活躍」します。そのうち一部の人は、帰国後に「特殊任務」を任されます。また一部の人は「聖戦」の精神により、自主的に行動に出すこともできます。パリとブリュッセルのテロ事件は、これらの帰国した「聖戦分子」と直接的なつながりを持つということです。
パリの同時テロ事件の容疑者逮捕が、今回のテロの引き金になった可能性が指摘されていますが、テロを起こすには準備時間が必要であり、逮捕以前から計画していたものと思われます。むしろ、過激派の拠点・関係者に対する捜索や摘発が強化されたことへの反発がテロにつながったと見ることもできます。
また、パリの同時テロ事件で浮き彫りになったのが、移民2世・3世による過激な行動です。中東や北アフリカからより良い生活を求めて移住してきた移民の子どもたちは、欧州が生まれ故郷であり、フランスやベルギーの国籍を持ちながら、多くが生まれたときから差別を受け、教育や就労の機会も平等に得られません。
そうした格差や差別・偏見に対する不満の受け皿となっているのが過激派組織です。欧州は中東に近いです。中東危機の影響が外部に及べば、先に影響を被るのは欧州だと言われています。