トランプ氏の米大統領就任から波乱の1カ月が過ぎようとする中、先ごろ、ペンス副大統領が、欧州に広がる対米懸念を払拭しようと、欧州歴訪を行いました。ペンス副大統領は、アメリカの基本外交方針に変更がないことを訴え、欧州の懸念を沈静化できたと言えます。
写真:AFP/TTXVN
トランプ大統領は米英2国間関係を重視する一方、「EUはドイツの乗り物」や、「EUからイギリスに続く離脱国が出るだろう」などと発言していて、欧州統合を軽視する発言を繰り返してきました。
そして、トランプ大統領は、GDP国内総生産比で少なくとも2%という目標達成に向けたNATO加盟各国の軍事費増額について、その目標が達成できなければ、NATOとの関係を再検討すると警告しました。これに対し、EUのトゥスク大統領は加盟国宛ての書簡で、米新政権をEUの将来を不確実にする「脅威」と位置付けて波紋を呼びました。
EUはアメリカの欠かせないパートナー
今回の欧州歴訪で、ペンス副大統領は、EU欧州連合の高官らと会見した際、EUと政治経済両面で「関係の深化」を望む意向を伝えました。ペンス副大統領は、20日の記者会見で「トランプ大統領はEUとの協力や協調を維持するため引き続き深く関与していく方針だ」と強調しました。
また、ペンス氏は米欧が共有する自由などの価値に触れ、「この絆は持続し、発展する」と強調し「大統領はアメリカが常に欧州を支持すると約束している。われわれは自由、民主主義、正義、法の支配という崇高な理念で結ばれている」と述べました。
ロシアに関しては、ペンス副大統領は、ウクライナ東部の停戦を定めたミンスク合意を順守するよう求めました。そして、「米国はロシアと一致点を探る。トランプ大統領はそれが可能だと考えている。その一方で引き続きロシアに責任を負わせる」と語りました。
欧州の反応
これに対し、トランプ政権への警戒感を示してきたEUのトゥスク大統領は、「アメリカがこれまでと同様、ヨーロッパの統合を明確に支持するよう期待する」と述べ、EUの政策や方針を尊重するよう、くぎを刺しました。しかし、トゥスク大統領は、国際法に基づく国際秩序、NATOを基礎とする安全保障、結束した欧州の重要性をめぐり、ペンス氏の見解を質問したところ、肯定的な回答を得たと評価しました。
一方、ドイツのメルケル首相は、NATOの目標水準まで国防支出を引き上げるため「あらゆる努力をする。義務だと感じている」と強調しました。そして、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権に対し、「われわれは共に行動してこそ強くいられる」と、多国間の協調を求めました。
ペンス副大統領の今回の欧州歴訪により、欧州の懸念はひとまず沈静化に向かいそうだと 見られています。