最近、アメリカとロシアの間で、ウクライナ問題やシリアの内戦、サイバー攻撃など対立が先鋭化しています。世界の2大国の対立は、思いがけない影響を及ぼす恐れがあります。
緊張エスカレート
この数日、米ロの間でサイバー攻撃問題をめぐる非難の応酬が続いています。アメリカ政府は、「大統領選挙に介入するためサイバー攻撃を行った」とロシアを批判しており、同じ方法で報復を行う可能性があるとしています。これに対し、ロシアのラブロフ外相は、「それは、根拠のない批判である」とサイバー攻撃を否定し、強く反発しました。
ロシアのラブロフ外相(写真:ロイター)
また、3日、ロシアのプーチン大統領は、アメリカとの間で2000年以降に結んだ兵器級余剰プルトニウム処分の合意を停止する大統領令を発布しました。大統領令は、アメリカ政府による「非友好的な行動」への対応として同協定を停止すると表明しています。今後、ウクライナ危機やシリアの内戦をめぐるアメリカとの駆け引きで核軍縮問題を切り札に使う可能性があると見られています。
シリア内戦 米ロ関係を悪化
15日、米ロやシリア周辺関係国による外相級会合が打開策を示せないまま終了しました。これを受け、16日、アメリカのケリー国務長官とイギリスのジョンソン外相は、シリアのアサド政権とロシアに対し、新たな経済制裁を検討していると表明しました。
ケリー米国務長官(右)とジョンソン英外相(左)
ケリー氏は「ロシアとアサド政権への追加制裁を検討しているが、オバマ大統領は現時点であらゆる選択肢を排除していない」と述べました。ジョンソン氏は「圧力を強め続けることが重要だ」とし、アサド政権とロシアの「戦争犯罪」を(ICC)国際刑事裁判所に提訴する可能性にも言及しました。
戻るか 米ロ間の冷戦
ウクライナ危機を受け、アメリカを始め欧米諸国は対ロシア制裁を実施しています。そして、シリア内戦は両国関係をさらに悪化させています。ドイツのシュタインマイヤー外相は、米ロ対立が深まるシリア情勢について「冷戦時代みたいだと考えるのは間違っている。現状は冷戦よりさらに危険だ」と厳しい認識を示しました。
政治アナリストによりますと、「米ロは冷戦に近づいた。大統領が変わっても、アメリカの基本方針は変わらないだろう」と対立の長期化を予測する声もあります。しかし、アメリカとロシアは世界の大国としての役割を果たして世界の平和維持に貢献しなければなりません。