アメリカのオバマ大統領が2日に連邦議会に提出した2016年度の予算教書では、法人税制改革に加え所得格差の是正やインフラ投資、国防費の増強を打ち出しました。財政再建を進めるための歳出の強制削減措置を停止し、財源に充てます。
2016年度は税収などの歳入が3兆5250億ドル(約412兆円)に対し、歳出が3兆9990億ドル(468兆円)に上ります。オバマ大統領は国防費などの連邦歳出を10年間にわたって自動的にカットする強制削減を停止し、軍事や公共支出などの政策財源に余裕を持たせる方針を示しました。
中間層重視の経済政策
中間層対策の具体策では子育て世帯への支援策や、2年制の大学の学費の無償化、さらに雇用の拡大につながる高速道路などのインフラ整備に充てるため歳出の上積みを要求しました。
そして、これを賄う財源として、富裕層の国民1%のを対象にした増税や、大企業が海外で蓄えた利益に対する課税の強化などを求めました。
この結果、全体の歳出は3兆9990億ドル、歳入は3兆5250億ドルを見込み、財政赤字は4740億ドルとオバマ大統領の任期中で最も少なくなるとしています。
共和党からの反発
しかし、議会の上下両院で多数を握った野党・共和党は富裕層への安易な増税は認められないと反発しており、予算教書の内容がそのまま認められる可能性は極めて低い見通しです。予算を巡っては、今の2015年度の予算でも、オバマ大統領が議会の承認を得ずに大統領権限で移民制度改革に踏み出したことに反発し、担当省庁に当たる国土安全保障省の予算が今月末までしか認められておらず対応が迫られています。
ベイナー下院議長は2日、声明を発表し、「オバマ大統領は国が直面している課題に対処せずに、支出を増やし新たな税金を課そうとしている」として強く批判しました。そのうえで「われわれは財政支出が拡大している問題に取り組むとともに国の安全も守る」として、共和党として独自の予算案を取りまとめる考えを示しました。
一方、ライアン下院歳入委員長は、アメリカ経済が抱える賃金上昇の弱さや職探しを諦めた人の多さといった弱点を踏まえ、「オバマ氏は6年間、高い課税と歳出拡大を追求し、アメリカ経済が負担を負わされてきた。今回の予算教書もほぼ同じ内容だ」と批判しました。
2016年度予算をめぐる論戦は2016年の大統領選での経済政策の争点に直結するだけに、両者とも弱みは見せられないということです。今後も歳出規模や財政赤字の削減ペースなどの対立点で激しい火花が散るのは間違いないでしょう。