今週はじめ、アメリカ軍と韓国軍は、朝鮮半島での有事に備えた合同軍事演習「ウルチフリーダムガーディアン」を韓国で開始し、朝鮮民主主義人民共和国がこの軍事演習に強く反発していることなどから、朝鮮半島での緊張情勢が増しています。
ある米韓合同軍事演習(写真:VNA)
アメリカと韓国が合同軍事演習を行う度に、朝鮮民主主義人民共和国は反発しますが、今回の反発が激化しています。朝鮮の軍総参謀部報道官は「アメリカと南朝鮮が宣戦布告してきた以上、われわれのやり方の最も強力な先制攻撃が任意の時刻に無慈悲に開始される」と警告しました。
大規模な演習
この合同軍事演習は、アメリカ軍と韓国軍が毎年韓国で行っているものですが、ことしは18日から今月29日までの日程で始まりました。
演習にはアメリカ軍からおよそ3万人、韓国軍からおよそ5万人が参加し、朝鮮民主主義人民共和国から攻撃を受けた場合などを想定して指揮命令系統の確認を行うほか、自治体や 企業なども参加して非常事態に備えた訓練も行われています。
また、ことしの訓練では、万が一朝鮮が核や大量破壊兵器を使用しようとした場合を想定し、その危険度に応じて段階別に米韓が対応する新たな作戦についても確認することになっています。
朝鮮の猛反発
対韓国政策を担当するキム・ヤンゴン朝鮮労働党書記は17日、韓国側に米韓合同軍事演習の中止などを求めました。
また、韓国政府が19日の開催を提案していた南北高官協議について、朝鮮側は同日までに諾否の回答をせず、開催が見送られました。特に、韓国国防省によりますと、朝鮮側は14日午前、東部から短距離の発射体3発を日本海に向け放りました。
朝鮮は6月下旬以降、短距離ミサイルやロケット弾を日本海に繰り返し発射してきました。米韓の反発に対し、国防委員会は7月下旬、「発射は合法的な自衛権行使だ」と主張していました。
関係悪化
実際、今年初めから、朝鮮民主主義人民共和国は南北関係改善を目指し、努力してきました。これは事実です。今年2月12日に板門店で開催された7年ぶりとなる南北高官級協議や、韓国のインチョンで開幕するアジア大会への朝鮮選手団の派遣の決定などはその証です。
しかし、今回の米韓合同軍事演習により、その関係がさらに悪化すると懸念されています。北側は「韓国と米国が合同軍事演習を強行することで南北関係の改善に逆行している」と非難しています。
18日にソウルで開催されたミサに出席したフランシスコ・ローマ法王は南北に分断されている朝鮮半島について、「一つの家族、民族だ」と強調し、融和を訴えましたが、現在の状況から見れば、その願いが現実になることは容易ではないと懸念されています。