(VOVWORLD) - テリーザ・メイ首相率いる与党・保守党が過半数を維持できないことで、イギリスは新たな政治的混乱に陥る恐れが出てきました。
8日に投開票されたイギリス下院議員選挙(総選挙)では、メイ首相の与党「保守党」は318の議席を獲得しましたが、改選前から12の議席を減らし、過半数割れが確実になりました。一方、労働党は改選前から33議席増やし、262議席になっています。これにより、イギリスは政治が不安定化する恐れが出ています。
メイ首相:「離脱交渉が予定通り19日の週にも始める」 |
選挙直後、メイ首相は少数政党の協力を得て続投をめざす考えを表明し、また、新政府を設立し、困難を乗り越える決意を固めました。そして、11日までに内閣改造を行いました。
内部亀裂
選挙後、野党側とその支持者らはメイ首相に対し、辞任するよう呼びかけました。 労働党のコービン党首は、「メイ首相は辞任して国民を代表する政府に道を譲るべきだ」と発言しました。労働党は、「262の議席で、少数党政府を設立できる」との確信を表明しています。
一方、近いうちに、保守党内で、信任投票が行われますが、メイ首相は多数の支持を得なかった場合、辞任せざるを得ない状態となります。メイ首相が12日、保守党の議員総会に出席し、党所属の下院議員の前で首相を続投する考えを表明しました。出席者から首相辞任や党首選の実施を求める声は出ず、メイ氏の即時辞任はひとまず回避されました。
また、メイ首相は翌日の13日午後、閣外協力の協議を続けている北アイルランドの地域政党「民主統一党」のフォスター党首と初の直接会談を行いました。閣外協力が実現する可能性が高まっています。
EU離脱プロセスに対する困難
6月8日行われたイギリスの総選挙は、イギリスのEU=欧州連合離脱を促進するものと見られていましたが、メイ首相の敗北はその離脱プロセスに多くのリスクをもたらしています。
メイ首相は13日、パリのエリゼ宮で、フランスのマクロン大統領との会談後の共同記者会見で、EUとの離脱交渉について、予定通り19日の週にも始める方針を示しましたが、これは実現できるかどうかは不透明です。というのは、メイ首相の当面の優先課題は組閣だからです。
保守党は14日、政権維持のため北アイルランドの地域政党、民主統一党と閣外協力を巡り協議を続けた一方、保守党内ではEUとの正式な離脱交渉を前に、メイ氏の強硬離脱方針について軌道修正を求める声が上がっています。
こうした中、フランスのマクロン大統領はイギリスのEU残留に向けて、「ドアは常に開かれている」と表明しました。
テリーザ・メイ首相率いる与党・保守党が過半数を維持できないことで、イギリスは新たな政治的混乱に陥る恐れが出てきました。これに関し、アナリストらは、「予想外の結果であり、イギリスのEU離脱を巡り、深刻な問題が浮上する可能性がある」と指摘しています