(VOVWORLD) - 2018年7月1日、オーストリアはEU理事会の半年ごとの輪番議長国を前任のブルガリアから、引き継ぎました。
セバスティアン・クルツ首相=THX/TTXVN |
1995年に加盟したオーストリアとって、1998年と2006年に続いて、3度目の議長国就任となっています。今任期で、議長国のセバスティアン・クルツ首相はEUの将来にとって決定的な意義がある問題の解決に悩むことが予測されています。
欧州理事会議長国は加盟国が半年ごとの輪番制で担当します。議長は単独の人物が務めるというものではなく、議長国政府が一体となって業務を行い、欧州連合の政策方針は任期中の国の影響を受けることになります。
EUの重要な時点
議長国のオーストリアは仲介と橋渡しをその役回りと位置づけ、緊張緩和やEUへの信頼強化に務めます。具体的には安全保障・不法移民、デジタル化を通じた繁栄と競争力の確保、西バルカン諸国のEUに近づこうとする努力の支援に取り組むとしています。また、EUは、共同で解決する必要のある大問題に集中し、加盟国や地域の方がうまく取り組める問題の場合は一歩引く、という補完性の原則をより強く提唱していきます。
リスボン条約(改正基本条約、2009年12月発効)で導入された「トリオ議長国」制度の下、オーストリアは先行するエストニア(2017年後半)およびブルガリア(2018年前半)と共に設定した18カ月間の長期的優先事項を基に行動します。昨年3月のローマ宣言に沿って、トリオ議長国は27カ国からなるEUの将来に関する議論を前進させる方針です。
オーストリアの首相府は、6月15日、2018年下半期のEU理事会(閣僚理事会)におけるオーストリア議長国の英語版プログラムを発表しました。2018年下半期には、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉が山場を迎え、2021年以降の中期予算枠組みの審議も本格化します。オーストリア議長国は、グローバル化による経済競争の激化や、近隣地域の武力紛争と移民、テロ対策などの課題に対し「守る欧州(A Europe that protects)」を標語に掲げ、「EUは共通の解決策が必要な大きな課題に取り組むべき」だとして3つの優先分野を挙げました。それらは安全保障と不法移民対策、デジタル経済への課税実現・デジタル化による繁栄と競争力の維持、及び欧州近隣地域の安定となっています。
任期中は試練山積
議長国のオーストリアは様々な目標を掲げていますが、EUの困難な状況の中で、これらの目標がなかなか現実化されないと予想されます。
2018年に入って、欧州の政治・経済を巡る話題がメディアを賑わせています。そこで今回は、2018年の1年間を展望し、政治(独の政権体制、ブレグジットの進捗と影響、中東欧の政局、イタリア総選挙)、経済(ユーロ圏・欧州の制度改革、欧州経済と欧州中銀の対応)の各分野で、6つの課題が取り上げられます。これらの課題の多くが、2017年中に問題として浮上したいわば「積み残し案件」であると同時に、問題の最終的な解決は2019年に持ち越されることになる見通しです。
また、ドイツ連立政権の「ジレンマ状況」の回避やブレグジットの通商協議、中東欧の政局不安定化、イタリア総選挙後の政局混迷、ユーロ圏・欧州の制度改革、欧州経済とECB=中央銀行の資産買い入れ終了の延期などの問題のリスクが表面化しやすくなっています。その時々に適切な手段が採られるかどうかが、欧州の今後にとって大きな分岐点となるとしています。