韓国の朴槿恵大統領は2日、左派系の金秉準氏を新首相に起用することを決めました。親友の崔順実氏の国政介入疑惑で批判が高まる中、事態収拾を図る狙いがあるとみられますが、野党側は猛反発しています。与野党対立は深刻化する一方で、韓国政界は混迷を極めています。
新首相人事について、与党セヌリ党は「野党の考えを尊重し、国民的期待に応えることができる方が指名された」と理解を求めましたが、2日午後に集まった野党3党幹部は人事撤回を要求しました。承認に向けた聴聞会など、首相任命に必要な国会手続きを一切拒否することで合意しました。首相任命は、国会本会議で出席議員の過半数が賛成することなどが条件となっています。4月の総選挙で敗れたセヌリ党は議席が過半数に達しておらず、野党の協力なしでは承認は難しい。左派系の盧武鉉政権で幹部を歴任した金秉準氏を選んだ理由も、野党側が求めていた「挙国内閣」実現へ賛成を取り付けやすいとの狙いがあったとみられます。
前首席秘書官が逮捕された
辞任か糾弾の恐れ
親友、側近と検察に外堀を埋められたうえ、疑惑の財団設立に関与していた可能性も浮上し、朴大統領は窮地に追い込まれています。韓国の検察は2日、朴大統領の親友の崔順実(チェ・スンシル)氏が大統領側近の安鐘範(アン・ジョンボム)前首席秘書官とともに企業に圧力を掛けて文化とスポーツを支援する財団に資金を拠出させたとして、職権乱用の共犯と詐欺未遂の疑いで逮捕状を請求しました。裁判所は3日午後に崔氏から話を聞くなどし、逮捕状を出すか判断します。また、2日に身柄を拘束された安氏が検察の調べに対し、この財団設立に朴大統領が関与したという趣旨の供述を始めていることが新たに分かりました。「財団設立は朴大統領の指示で、資金集めの状況を報告していた」との現地報道もあります。
世論調査機関リアルメーターによりますと、朴大統領の支持率は過去最低の17.5%に低下しました。検察当局は、崔氏が国政に影響を及ぼしたり、大統領との友人関係を利用して個人的な利益を得ていないかどうかを捜査しています。この問題が表面化して以来、野党は慎重な姿勢に徹し、朴大統領の辞職や弾劾要求を控えています。
政治的混乱が続く
大統領が辞職した場合、法律により60日以内に選挙を行う必要があります。アナリストによりますと野党は今のところ政権を担う準備ができていません。韓国政治アカデミーの金萬欽院長は「朴大統領が辞職すれば大混乱状態になる。誰もが1年間の選挙戦を念頭に置いていた」と述べました。
朴大統領は2日の首相に続き、3日も大統領府の秘書室長など新たな人事を発表しました。しかし、事前の調整もないままの発表で、野党だけではなく、与党も反発しています。朴大統領は政権運営でも手詰まり感が否めず、韓国の政治の停滞はまだまだ続くことになります。