シリア政府軍は27日、世界遺産の都市遺跡で知られる中部パルミラの全域を、過激派組織IS=「イスラム国」から10カ月ぶりに奪還しました。ISをめぐっては掃討作戦を主導するアメリカが25日、ナンバー2とされる幹部をシリア領内で殺害したと発表するなど、シリアとイラクでのISの劣勢が鮮明になっています。
シリア国営テレビによりますと、ISからパルミラを奪還したことを受けて、アサド大統領は「パルミラ解放は重要な戦果。テロとの戦いにおけるシリア軍と同盟軍の成功を示す」と述べ、政府軍の成果を強調しました。
パルミラにいるシリア政府軍(写真:viettimes.vn)
政府軍の攻勢強化
パルミラはシリアの東西を結ぶ戦略的な要衝です。政権軍は声明で「ISに痛烈な一撃を与えた。テロ組織の崩壊と敗北の始まりだ」と宣言しました。ISは昨年5月にアサド政権軍を撃破して制圧後、ここを拠点に西進を続け、パルミラ―ホムス間に支配地域を拡大していました。
アサド政権軍は今年3月下旬から空爆支援を続けるロシア軍とともに、パルミラへの攻勢を本格化しました。奪還したことで、シリア中央部からイラク国境に広がる広大な砂漠地帯を支配下に置くことができます。シリア軍高官は声明で、パルミラを拠点とし、ISが首都と称する北部ラッカや東部デリゾールなどへの作戦を進めるとしました。
軍事専門家は、シリア政府軍の成果はロシア軍の支援によるところが大きいとみています。ロシアは主力部隊を撤収させましたが、残存部隊による支援で依然として強い存在感を発揮しています。シリアの政府軍がパルミラを奪還したことを受けて、ロシアのプーチン大統領は27日、アサド大統領と電話会談して、今後もISなどテロ組織に対する作戦への支援を続ける方針を伝えました。
シリア内戦交渉の方向転換へ
来月9日に、スイスのジュネーブで、アサド政権と反体制派による和平協議が再開する予定です。戦場での政府軍の成果は交渉に大きな影響をもたらすと言われています。
シリア和平協議で、反体制勢力がアサド大統領の退陣を強く要求しています。しかし、昨年9月にロシアが軍事介入して以降、政権側は戦闘を優位に進めており、アサド氏の処遇でも一切妥協しない構えです。
欧米も同大統領の退陣を求めていますが、アメリカのケリー国務長官は先ごろ、ロシアのラブロフ外相と会談した際、アサド大統領の処遇について話し合う時点ではないとの考えを示しました。また、シリア問題を担当する国連のデミストゥーラ特使は、今度の和平協議は交渉の原則ではなく、政治プロセスについて話し合うと明らかにしました。
戦場でのISとの戦いが大きな前進を得ており、交渉の行方に影響を及ぼすと見られていますが、どのようにシリア内戦を終結させるのかが焦点となっています。