2021年11月現在、ベトナムの報道機関の数は816社で、その内259社には電子媒体があります。その中で、紙と電子媒体のいずれも発行している報道機関は230社あり、電子版のみは29社です。しかし、電子媒体の有無にかかわらず多くの報道機関はすでに進化したデジタル技術を業務に活用し、読者や視聴者に、より良い番組やサービスを提供できるようにしています。

中には、AI人工知能や、（IoT）モノのインターネット、クラウド、ビッグデータなど、最新のデジタル技術を活用している報道機関もあります。デジタルトランスフォーメーションで最初に成果を収めたと評されているVOVベトナムの声放送局、VNAベトナム通信社、VTVベトナムテレビ局、電子新聞VnExpress、Zingなどの大手に続き、ハノイ市や、ゲアン省、バクニン省、トゥエンクアン省など各地の報道機関もデジタルトランスフォーメーションを始めています。

ベトナムジャーナリスト協会のレ・クォク・ミン会長

ベトナムジャーナリスト協会の会長を務めるベトナム共産党機関紙「ニャンザン」の編集長レ・クォク・ミン氏は、デジタルトランスフォーメーションはベトナムの重要な戦略の一つで、報道界はその動向に従うべきであると述べ、次のように語りました。

（テープ）

「専門家らによりますと、デジタルトランスフォーメーションは必ず利益をもたらすとされており、私たちはそれを実現させるための方向を打ち出さなければなりません。その目標はテクノロジーを基盤とする報道機関になるということです。もちろん、その目標を実現するのにはかなり時間がかかります。現在、世界各国の多くの報道機関はテクノロジーを基盤とする方向へと発展していますが、それに対し、テクノロジー系企業の多くもコンテンツへの投資を強化し、通信テクノロジーグループへと発展しています。私たちも、テクノロジーを活用して、利用者の数だけでなく、利用者の閲覧時間も伸ばさなければなりません」

VOVベトナムの声放送局系列のVTCデジタルテレビ局のデジタルコンテンツセンターはデジタルトランスフォーメーションで著しい進展のある報道機関の一つです。同センターのグエン・レ・タン所長によりますと、デジタルトランスフォーメーションを効果的に進めるためには、それぞれの報道機関が自らの状況に見合うテクノロジーや資金、人材を投入するのが重要ですが、最も重要なのはスタッフの認識を変えることであるとしています。タン所長の話です。

（テープ）    

「今まで使っていた大きなカメラをやめてスマートフォンなどで写真撮影するようカメラマンに求めたとき、写真を専門とする学校を卒業したので、携帯ではなく、プロのカメラマンとして仕事をしたいという反応がありました。人間の認識を変えることには時間がかかるということがわかりました」

「ベトナム報道のデジタルトランスフォーメーション・理論と実践」というセミナーの様子

6月中旬にハノイで開催された「ベトナム報道のデジタルトランスフォーメーション・理論と実践」というセミナーでは、多くの報道機関はデジタルトランスフォーメーションの必要性を認識しており、テクノロジーの導入で活動モデルが刷新されているとの意見が多くの出席者から出されました。情報通信省報道局のグエン・タイン・ラム局長は、報道界はデジタルトランスフォーメーションの競争段階に入っており、情報通信省はその競争を奨励していると述べ、次のように語りました。

（テープ）   

「情報通信省は国のデジタルトランスフォーメーションプログラムの一環として、報道関係者約3000人を対象にデジタル関連のスキル向上プロジェクトを展開しています。これは、デジタル空間でどのように仕事をするのか、その空間でどのように自分を守るのか、報道界のデジタルエコシステムをどのように築くのかというテーマの下で学び、報道界におけるDXの適材を育成するものです」

専門家らによりますと、国は報道機関のデジタルトランスフォーメーションを優先課題と見なし、報道機関への支援を強化する必要があるほか、報道法や通信法など関連の法律を改正することも大変重要であるとしています。