クアンニン省バチェ県のカオラン族 独特な民謡の保存に全力

(VOVWORLD) - 民謡を通じて自分の心の動き、気持ち、愛情、希望などを表すことができるのです。

ベトナム東北部に居住している少数民族カオラン族の人口は約21万人ですが、その中で、クアンニン省バチェ県に住む人口はわずか500人ほどで、豊かな民芸をしっかりと守っていることで知られています。バチェ県では、民謡が今もなお、カオラン族の日常生活の中でよく歌われており、彼らの精神生活にとって重要な役割を果たしています。

民芸研究家によりますと、カオラン族の民謡は長い歴史があり、その起源はいつなのかはわかりませんが、代々伝えられてきた価値の高い無形文化としています。この民謡は男女による歌垣の形で、男女の逢瀬、結婚式、長寿のお祝いの席などでよく歌われています。メロディーは3、4つほどあります。その種類は昼間の歌、夜の歌、結婚の歌などです。現在、カオラン族は昼間歌う歌500曲、夜歌う歌1000曲、結婚の歌100曲を歌っています。民謡を歌う人は若者だけでなく、中年やお年寄りもいます。民謡を通じて自分の心の動き、気持ち、愛情、希望などを表すことができるのです。

クアンニン省バチェ県のカオラン族 独特な民謡の保存に全力 - ảnh 1カオラン族の独特な民謡「シンカー」

中でも、「シンカー(Sinh Ca)」と呼ばれる歌垣は民謡の一種で、一番魅力的な芸能の一つであると評されています。シンカーは、日常生活をテーマとしたもので、この歌垣を聞くだけで、この民族の人々の考え方や心の動き、習慣などがわかると言われています。また、日常生活の中から生まれたシンカーは日常生活から切り離せない部分のようで、現代生活の影響を受けつつも、今もカオラン族の人々がほとんど歌えます。

(テープ)現場の音

歌垣は、他の民族でもよく歌われていますが、テイ族の「スリー」(Sli)という歌垣やキン族の「クアンホ」という歌垣はほとんど、お祭りやお正月などでしか歌われません。それに対して、カオラン族のシンカーはこの民族の血に組み込んだように、どこでもいつでも歌われます。また、終わりがないように、数日に渡ってシンカーを歌うのが普通です。

楽器が要らないこの歌垣は、道で出会った時や、市場へ行った時、畑仕事をする時、結婚の時などでは挨拶の代わりに歌われています。また、会話ではなく、シンカーを歌いオペラのように話し合うこともたくさんあります。シンカーの歌詞は歌い手の生活に関連するもので、これはカオラン族ならではの音楽によるコミュニケーションであると言われています。

クアンニン省バチェ県では、カオラン族の伝統的なシンカーが保たれていると評されます。シンカーのベテラン謡い手ルック・ヴァン・ビンさんは次のように話しました。

(テープ)

「バチェ県のカオラン族の人々は、他の地方と同じ歌詞で歌いますが、違うのは声の響きです。バチェ県の歌声の響きは昔と全く変わらないのです。」

また、カオラン族はたまに、シンカーを歌う会を開きます。シンカーの会は昼間休んで、夜だけ歌います。5日から7日連続、夜通しで歌われます。その会で歌われる歌は700から1000曲までです。歌い手は歌垣がうまいだけでなく、高い集中力が求められます。ちょっと間違ったら歌い続けてはいけないからです。また、先に歌われた歌と重なってもいけません。

シンカーの会の一晩は夜7時か8時ごろから翌日の朝までです。歌い手は男性グループと女性グループの2つに分かれて歌います。それぞれのグループにはリーダーがいて、そのリーダーは歌が上手で、口もうまいです。また、歌い手は全員が未婚でかつ、血族関係がないことが条件です。シンカーの会は男女の恋愛が産まれる場でもあるからです。先ほどのベテラン謡い手ルック・ヴァン・ビンさんは次のように話しました。

(テープ)

「シンカーの会は7日間連続で行われたこともありますよ。男性グループと女性グループが交代で歌います。歌を通じて、普通は話し言葉で話せない気持ちなどを表わすことができます。シンカーの会は決まった時期ではなく、好きな時に行われます。」

ビンさんによりますと、バチェ県では、今もなお、シンカーの会がたまに行われており、この地の独特な文化活動となっています。

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