(VOVWORLD) - ベトナム西北部ソンラ省は壮大な山々と少数民族の豊かな文化で知られていますが、貧困率が最も高い地方でもあります。山奥にある少数民族の村ではインフラの未整備と困窮する生活により、住民は教育に関心がないという時代もありましたが、現在は学習奨励運動が当地にも広がっています。
ハノイから西北へ約220キロメートル離れたところにあるソンラ省バクイエン県ランチェウ村は少数民族モン族の居住地であり、村の中心にあるファン・サ・シンさんの家の玄関には、「学習家族」という看板がかけられています。この看板は子どもの学習を重視・奨励する家族に贈られます。また、家の中にもシンさんの子どもに授与された成績優秀者の表彰状が数枚、目につきやすい所に貼られています。
ソンラ省の教室 |
しかし、十数年前はそうではありませんでした。シンさんの家族はランチェウ村のほとんどの家族と同様、教育の重要性を認識せず、子どもの学習に関心を持っていませんでした。教育インフラが未整備であっただけでなく、生活が大変だったので、子どもが読み書きできるようになると働かせたからです。ベトナムの都市部は、海外からの投資が活発で、新興国としての発展を見せていますが、都市部と地方では発展の格差があります。特に、少数民族が多い山岳地域ではインフラの整備が遅れ、簡易な造りの校舎や村の集会場、倉庫を借りて子供たちが勉強している村もあります。これはランチェウ村の十数年前の話です。
当時、シンさんの子どもは、朝、まだ暗いうちに起きて水汲みの仕事を終えた後、朝食を十分にとることができないまま、学校までの長い道のりを徒歩で通いました。ようやく辿り着いた教室は、竹で編んだような簡単な造りの小屋でした。教室数が足りず、授業は午前・午後の2部制で行われ、中には2、3時間かけて歩いて学校に通う子どもたちもいました。そのため、途中で学校をやめてしまうケースも少なくありませんでした。
しかし、十数年前にソンラ省は、国の支援を受けて教育への投資を強化し、新たに学校を建設するとともに、学習奨励運動を開始しました。この運動では、少数民族の人々に教育の重要性を理解してもらうための宣伝啓もう活動を活発に行ったほか、子どもに教材や奨学金を支給してきました。これにより、就学年齢の子供の就学率が増え、中退率がかなり減ってきました。ファン・サ・シンさんは次のように語りました。
(テープ)
「かつては高山で遊牧生活を送っておりとても大変でした。そのため子どもの学習についてほとんど考えていませんでした。しかし、国の支援によって、今では村で定住生活を送っています。また、子どもが学校に通えるようにいろいろな支援をもらいました。現在、子どもたちは安定した仕事に就き、前より生活が楽になりました」
ランチェウ村小学校のファム・テイ・アイン・グエット校長によりますと、基礎教育を受けないまま学校をやめ、若いうちに安い賃金で働き始める人は、成長して家庭を持っても貧しさから抜けられず、自分の子どもを学校に行かせることができないという悪循環に陥る人もいるのです。教育をきちんと身につけることは、貧しさと決別する絶好の機会になります。農業でも学校に通った農民は、通わなかった農民よりも、生産高が高くなる傾向が見られるとしています。グエット校長の話です。
(テープ)
「学習奨励作業を促進し、困難な生活環境にあっても子供の就学を激励した結果、近年、途中で学校をやめた生徒はいなくなりました。学校は地方行政府のほか、青年団体、女性協会などの協力を受けて、子どもの就学を説得する創意工夫を凝らしました。これにより、子どもの就学率も進学率も高まっています」
現在、全国各地の大学や短期大学専門学校などに通っているランチェウ村出身の若者は100人を超えています。この数は、教育に対する村人の認識が大きく変わってきたことを示しています。西北大学に在学中のランチェウ村出身のファン・ア・スさんは次のように語りました。
(テープ)
「幸いに、私は両親のすすめで村の学校に通うことができ、おかげで大学にも入学できました。大学で一生懸命勉強し、将来、良い仕事を見つけられるであろうと思います。これにより、私自身だけでなく、両親もよりよい生活を送れると思います」
これから、ソンラ省は教育を貧困解消の抜本的な対策と見なしており、ランチェウ村を模範にして、学習運動をさらに広げていく方針です。