フン王を祀る信仰 ベトナムの代表的な無形文化遺産

(VOVWORLD) - ベトナムの代表的な無形文化遺産とされるこの信仰は、ベトナム人の精神生活において特別な位置を占めています。

ベトナム人は建国の祖フン王を祀る信仰がありますが、2012年12月に、UNESCO=国連教育科学文化機関はこの信仰を世界無形文化遺産として認定しました。ベトナムの代表的な無形文化遺産とされるこの信仰は、ベトナム人の精神生活において特別な位置を占めています。

フン王を祀る信仰 ベトナムの代表的な無形文化遺産 - ảnh 1ベトナム建国の祖「フン王」 

ベトナムの伝説によりますと、炎帝神農氏の五代の子孫であるラクロンクァンは仙人の仙女であるアウコと結婚しました。アウコは100の卵を生み、100人の子供を作りました。子供たちが大きくなると、ラクロンクァンは50人の子供をつれて海岸のある平野へ、アウコは残りの50人の子供をつれて山地へ行き、別れて暮らすことになりました。ラクロンクァンに従った50人の子供の中から、フン王が出て、ヴァンランという国を建国しました。これがベトナム人による最初の国家です。

そのため、ベトナム人の考えでは、フン王はベトナム民族の先祖としています。その意味で、フン王を祀る信仰はベトナム人の血となり肉となり、ベトナム人の結束力をつくっていると言えます。ベトナム民族の発祥地とされる北部フート省にあるフン王を祀る寺院は先祖の象徴であり、神聖な土地つまり聖地です。フン王の命日である旧暦の3月10日にフン王を祀る寺院を1度でも訪れて拝むことはベトナム人にとって生涯の希望です。「どこに居ても、3月10日の命日は覚えていてね」という言葉はベトナム人の誰もが心の中にもっています。フン王を祀る信仰は民族精神のシンボルであり、民族大団結のルーツでもあると言えるでしょう。国家遺産評議会の委員グエン・チ・ベン教授は次のように語りました。

(テープ)

「フン王を祀る信仰は、国民の精神の拠り所として特別な位置を占めています。歴史から見ると、どの王朝もこの信仰を大切にしてきました。そのため、フン王を祀る信仰は、国を支えるものであり、民族の団結を強化する基盤でもあるといえます。」

ユネスコは、この信仰を「世界文化遺産」として認定した決定書の中で、「フン王を祀る信仰は先祖への尊敬心を示すもので、こうした尊敬の心から民族の誇りと結び付けて格上げした。」と強調しました。

文化研究者によりますと、フン王を祀る信仰は、先祖を祀る信仰の一つで、「水を飲むとき、井戸を掘った人の恩を思う」というベトナム人の美意識を示します。こうした先祖への尊敬心は、仁愛や家族を大切にする意識など、人間の精神的成長に役立つだけでなく、愛国心や共同性を培うので、国の独立やアイデンティティを守るという効果もあります。フート省に拠点を置くフンヴォン大学の歴史博士チャン・ヴァン・フンさんは次のように話しました。

(テープ)

「フン王を祀る信仰は非常に大きな価値を持つことで世界にも顕彰されています。第1の価値は、民族の団結、コミュニティーのつながりを強化することです。第2の価値として、「水を飲むとき、井戸を掘った人の恩を思う」というベトナム民族の良き伝統を示すことです。第3の価値はベトナム民族のルーツに関する教育的な価値です。これらの価値は今もなお、国の発展事業に役立っていると思います。」

新型コロナウイルス感染症が世界に広がっている背景の中で、ベトナム建国の祖「フン王」を祀る信仰は国がパンデミックを乗り越えるための重要な原動力となっています。

ホーチミン主席は生前、「団結・団結・大団結:成功・成功・大成功」と述べ、団結の大きな力を強調しました。数千年にわたるベトナムの歴史を振り返れば、その事実は明らかです。また、現代歴史では、民族の大団結が発揮されたことにより、かつての民族解放事業と現在の建設発展事業は大きな成果を収めました。特に、現在の新型コロナウイルスとの闘いでは、民族の大団結はその勢いと役割を示しています。

現在、ベトナム全土には、フン王、並びに、フン王時代の将軍などを祀る寺院は1400カ所以上で、その中で、345カ所の寺院はベトナム民族の発祥地とされる北部フート省にあります。また、アメリカやロシア、チェコ、ラオスなどベトナム人が多数在住している国にもフン王を祀る寺院があります。こうした数を見るだけで、フン王を祀る信仰がベトナム人の心の中のどこにあるかがわかります。今後も、この美しい伝統は次の各世代に引き継がれてゆくことでしょう。

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