(VOVWORLD) - 社会全体で(DX)デジタルトランスフォーメーションが加速していく中で、博物館のデジタル化は世界中の博物館で避けられません。博物館のデジタル化は、展示空間の多次元拡張に役立ち、見る人の多様なニーズに応えられる良い方法であるとされています。ベトナムの博物館もDXの推進に全力を尽くしています。
現在、ベトナムには国立博物館と私立博物館が合計で約200か所あります。DXの推進を国策の一つと見なされている中で、デジタル化に関心を寄せている博物館は増えつつあります。専門家らによりますと、博物館は「文化のハブ」として、多様な文化的・社会的・経済的価値を、デジタル化を通じて創出することができます。文化芸術の振興を図るためには、国民一人一人が「いつでも・どこでも・なんどでも」気軽に、実物のみならず、デジタル化された資料を通じて有形・無形の文化遺産にアクセスし、収集・保存・研究・活用できる環境を整備することが重要です。さらに、機械可読性の高いデータを作成・頒布することによって、AIなどの自動処理による新しい価値が生み出される可能性を見据えておくことも重要であるとしています。
アプリ「「iMuseum」で出てくる展示場 |
実際、デジタル化事業において見るべき成果を収めた博物館があります。その代表的な例としてはハノイ市内のベトナム美術博物館です。総面積4737平方メートルのこの博物館はベトナムの美術作品およそ2万点が保管されています。ベトナム美術博物館は常に、ハノイで絶対行きたい博物館のトップの一つと評価されています。
そして博物館のデジタル化の動きに対応するため、2年前に、同博物館は「iMuseum」というマルチメディアアプリを公開しました。このアプリはiOSとAndroidに対応しており、スマートフォンやタブレットで利用できます。5万ドン(日本円で約300円)の料金で8時間使えるこのアプリは高い品質の画像で作品を紹介したり、音声やテキストで作品を解説したりする機能があります。また、見学者は展示物の配置場所や展示概要図などを確認することもできます。
また、直接博物館を訪れる人は、展示物に貼ってあるQRコードをアプリで読み込むだけで、その展示物について深い情報を得られるようになります。これにより、ガイドがいなくても、自分で博物館を楽しむことができます。これは観光客はもちろん、研究者にとってもとても有益です。ハノイ国家大学所属人文社会科学大学の博士コースに参加しているダン・ダン・コアさんは次のよう話しました。
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「以前と比べて最も便利だと思うことの 1 つは、このアプリ「iMuseum」を使用すると、それぞれの遺物に関する詳細な情報にアクセスできることです。以前は、情報を十分に得るためには、非常に分厚く、難解な専門書を探しだし、購入するのには大きな労力を費やす必要がありました」
オーディオ、テキスト、高品質の写真などを提供できるマルチメディアアプリケーションを開発し、ユーザーがスマートフォンなどでオンラインにアクセスできるようにするだけでなく、ベトナム美術博物館は自らのウェブサイト「vnfam.vn」をデジタル化に向けてアップグレードし、コミュニティとのつながりを強化しました。ウェブサイトでも、遺物の詳しい情報のほか、3D ギャラリー、または 3D ツアーを提供することで、世界中からの利用者が博物館に簡単にアクセスできるよう支援しています。ベトナム美術博物館のグエン・アイン・ミン館長は、ウェブサイトがデジタル化に向けてアップグレードされ、アプリ「iMuseum」は美術博物館のデジタル化に大きく役立っており、その効果は大きいものがあると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「『iMuseum』は高品質な画像、音声、写真、そして、テキストを提供するマルチメディアアプリケーションです。このアプリはベトナム語のほか、英語、フランス語、日本語、中国語など8 か国の言語に対応しており、世界中の多くの国からの観光客が自国の言語で館内の作品にアクセスできます。ベトナム美術博物館の展示物には多様なアプローチの手段があると言えます」
多くの人を引き付けるベトナム美術博物館の3Dツアー |
ベトナム美術博物館だけでなく、国内の多くの博物館でも、ウェブサイト上で 3D ツアーを開設したり、テーマ別のオンライン展示を行ったり、ボイスオーバー技術を応用して観客に作品を紹介したりしています。
北西部ディエンビエン省にあるディエンビエンフー勝利博物館もデジタル化計画を精力的に展開しています。同博物館のブー・ティ・トゥイェト・ガー副館長は、同博物館の価値を国内外の人々に紹介するために、段階的に展示物のデジタルデータとデータバンクを構築するとともに、見学者のアクセスとつながりを強化する方針であると述べ、次のように語りました。
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「ディエンビエンフー勝利博物館は、世界を震撼させたディエンビエンフー作戦に関する現物や資料を保管・展示するところです。ディエンビエンフー作戦を国内外の人々に紹介し、その作戦の価値を理解してもらうために、博物館のインフラ整備を進めています。中でも、デジタル化に特別な関心を寄せています」
一方、世界遺産ハロン湾をもつ東北部クアンニン省ハロン市にあるクアンニン博物館は、館内の3Dツアーを開設しました。同博物館の情報技術課のグエン・シー・ゴック課長は次のように語りました。
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「当博物館の展示空間全体がウェブサイト上で 3D デジタル化されています。博物館に行くことができない場合は、3D ツアーを通じて楽しむことができます。また、スマートミュージアムへのより多くの投資プロジェクトを今後も続けていきたいと考えています」
新型コロナの影響で、デジタル化の重要性を認識する博物館の数が急増しました。これにより、新型コロナの発生以来、博物館のデジタル化が一段と促進され、目覚ましい成果を収めました。ベトナム美術博物館によりますと、新型コロナ禍の初期段階でアプリ「iMuseum」を開設してからわずか 3 か月で、オンライン博物館への訪問者数は 8,000 人近くに達し、この数は新型コロナ流行前の 1 年間の直接訪問者数に匹敵するとのことです。これは、博物館のデジタル化の効果の高さを示すものでしょう。