チャックサー村の光景(Nhã Uyên/qdnd.vn撮影)

ハノイ市中心地からおよそ60km離れた所にあるウンホア県チャックサー村は、約1000年の歴史を誇るアオザイの仕立て業の発祥の地として知られています。アオザイ(Ao dai)とは、丈の長い上衣と長ズボンがセットになったベトナムの伝統的な民族衣装です。アオザイの仕立て業は何世代にもわたる村民たちによって「父から子へ受け継がれ」、独自の技術と秘密が何世代にもわたってチャックサーアオザイ・ブランドを生み出してきました。これまでに、チャックサー村のアオザイの仕立て業は「国の無形文化遺産」として認定されています。

Nhã Uyên/qdnd.vn撮影

チャックサー村は特別な村であるとも言われています。つまり、男性が裁縫を、女性が農作業を行います。村民の高齢者によりますと、男性がアオザイの仕立に従事する理由は、女性が別の村に嫁いで行くと伝統や技術が途絶えてしまうため、父親である職人らが息子に縫製技術を伝え、次の世代へ受け継いできたためです。しかし、これまで、社会の概念が変わるにつれて、女性も男性と同じようにアオザイの縫製技術を教えられてきました。

アオザイ仕立て職人であるブ・ティ・ハンさんは次のように明らかにしました。

(テープ) 

「昔、ミシンがなかった時代、チャックサー村の男性はアオザイの仕立てをするために、周辺地域へハサミ、針、定規だけを持参して、歩いていきました。現在、社会の発展にともない、村民の女性のみならず、娘嫁、娘婿さえもアオザイの仕立て業を教えるようになっています」

現在、チャックサー村には500 世帯以上が住んでおり、そのほとんどがアオザイの仕立て業で生計を立てています。6歳から7歳まで子供たちは裁縫を教えられ、15歳から16歳になる頃には自分でアオザイの仕立てをするようになります。3 ～ 4 世代に渡ってアオザイの仕立て業に従事する家族もいます。さらに、アオザイの仕立て職人として認められています。

職人のギエム・バン・ダットは次のように述べています。

(テープ)

「アオザイの仕立て業は、父から子へと受け継がれてきた職業です。だから私は子供の頃からこの仕事をしました。昔、私たちは、最初は針の持ち方と裁縫の基礎について教わります。村民たちは、伝統的なスタイルから現代的なスタイルまで、アオザイの縫い方を学び、全員がそのやり方を知っています。仕立て業に熟練した女性もいますが、男性ほど上手ではありません。私の子供たちもこの職業を継承しています」

アオザイの職人によりますと、アオザイの仕立て業で一番難しいのは、ほかの村のアオザイとは違うオリジナリティを出して客を惹きつけることだそうです。それは、縫い目が表から見えないようにする縫い方です。

この伝統工芸に従事してから40年が経っている職人ミン・タムさんは次のように明らかにしました。

（テープ）

「アオザイ縫製には技術が求められます。1枚のアオザイの裾には1列のミシンの縫い目、3列の手縫い目、3列のぐし縫い目を含む7列の縫い目があります。もちろん、アオザイを柔らかく滑らかに仕上げられるための秘訣もありますよ。」

美しいアオザイを縫うには、職人だけが巧みに行うことができる細心の注意を払う必要があるようです。それぞれのアオザイは個々の寸法に合わせて調整され、縫い目も均一で完璧にフィットしますが、それでも柔らかなアオザイが出来上がります。したがって、チャックサー村のアオザイの縫製費用だけでも 1 着あたり約 35万ドン、およそ2千円になります。仕立て料は生地やデザインなどの種類によって価格が異なります。100万ドン、およそ6千円という安いものがあれば、2億ドン、約125万円に上る高いものもあるそうです。

旧正月テトの時期と結婚式シーズンである10～11月の繁忙期には、人を雇ったり夜通しで作業をして仕上げます。アオザイの仕立て業が発展するにつれて、今日のチャックサー村の光景も大きく変わりました。コンクリート舗装されたきれいな道路の両側には立派な家が建ち並んでいます。村民の生活も豊かになっています。

多くの村民がアオザイのアオザイオーダーメイドショップを営んでいます。

（テープ） 

「私はこの伝統工芸を学び始めたのは約10年前でした。当時は工芸村が発展しはじめた頃です。その後、兄弟にアオザイの仕立て方法を教えました。この仕事も安定しているので、この職業を受け継ぐことにしたのです」

（テープ）

「最も誇りに思うことは、私が伝統的なアオザイの仕立て村で生まれたことです。また、家族の長老、叔父、叔母からこの職業について多くのことを身に付けました」

現在、チャックサー村のアオザイは、ハノイの文化や観光PR活動で頻繁に紹介されています。例えば、ハノイアオザイ観光フェースティバールや、ハノイ観光ギフトフェスティバル、ベトナム女性博物館でのアオザイの展示と紹介などです。

さらに、チャックサー村の衣料品は、中国、韓国、モンゴルなどの多くの市場に輸出されています。2004 年、チャックサー村は「伝統的なアオザイの村」として認定されました。そして、2024年12 月末にはチャックサー村の裁縫業が国家無形文化遺産に認定されました。