錦織製品の販売をライブ配信しているクエンさん

北部山間部バクカン省に住む少数民族ザオ族であるリー・ティ・クエンさんは、ザオ族の伝統工芸品の経済価値化に貢献した人として知られています。彼女は、「ティエンアン」という名前の協同組合を成立し、多くの住民を雇い、国内外の観光客へのザオ族のユニークな文化をＰＲしてきました。

クエンさんは、師範大学を卒業したものの、さまざまな理由から、教師になるという夢を捨て、故郷での山地農業に従事することにしました。以前、現地で栽培されるバナナなどの農産物は収穫量は多いものの、安い価格で販売されている状態でした。そこで、クエンさんは、それらの農産物を経済的価値のある製品にしようと思いつきました。

クエンさん(中央)

以来、彼女は、村民の女性たちと相談して、ドライバナナを作ることにしました。ドライバナナは常温で長期間の保存が可能なほかにも、高い価格で販売できるからです。2017年、クエンさんは、「ティエンアン」という名前の協同組合を設立し、組合長を務めました。1年後、協同組合のドライバナナは、国内市場での知名度が高まり、バクカン省人民委員会からOCOP=一村一品製品として認定されました。

クエンさんは次のように明らかにしました。

（テープ）

「現地住民の考えでは、少数民族出身の女性は、経済的な発展を遂げることはできず、主に山地農業に従事するだけです。ですから、私の経済的な発展を支持してくれる人はほとんどいませんでした。また、経済活動に参入することで、仕事と家庭の両立にも悩まされます。高齢の両親と暮らし、幼い子供を一人で育てている私にとって、起業は非常に難しい道のりでした」

クエンさんは、ドライバナナの生産に成功した後、バナナチップス、蜂蜜、野生の竹の子などの商品の研究と開発を続けました。しかし、当時は、設備が不足し、生産量も少なく、市場競争などの理由で、協同組合の収益は期待されたものとはほど遠いものでした。クエンさんは、長い間対応に苦慮していた後、薬草と錦織製品の生産に着手することにしました。それから、彼女の協同組合は、ザオ族秘伝の薬草の効能を活用した上で、大人、子供、産後女性向けの薬用入浴剤、マッサージオイル、薬草エキスなどを製造しました。同時に、錦織製品であるスカーフ、帽子、マスク、テーブルクロス、または手刺繍の民族衣装、ベッドシーツなどを作りました。特に、クエンさんたちは、薬草の入った枕を生産しました。

これは、錦織の枕カバーと、ハーブを詰めた枕の中身を組み合わせた製品で、疲労の解消と睡眠の改善に役立ちます。クエンさんについて、ナイット集落党委員会のゴ・バン・フンさんは次のように評価しています。

（テープ）

「クエンさんは若いにもかかわらず、大胆にものごとを考えるダイナミックな女性です。彼女が今日のような成功を収めるようになったのは、様々な困難を乗り越えた結果です。以前、ザオ族の貴重な薬用植物はまったく活用されていませんでした。でも、クエンさんは、それらの薬用植物を商品化しました。それだけでなく、彼女の協同組合は、多くの村民の雇用を創出しています」

クエンさんの協同組合は均一な品質の製品を効率的に大量生産し、本来の自然な色を保つために、大胆に資金を借りて低温乾燥機システムを購入しました。同時に、インターネット上の情報を参考にした上で、市場のトレンドに合わせたデザインのアイデアを考え出しました。そして、彼女は、デジタルトランスフォーメーション、電子商取引などに関する訓練コースにもよく参加しました。それにより、彼女と組合員たちは、販売動画を制作したり、製品の販売をライブ配信したり、ソーシャルネットや、電子商取引サイトなどを利用して、製品の宣伝、紹介を行うようになりました。その結果、ティエンアン協同組合の製品は多くの消費者にますます知られるようになり、ハノイ、ハイフォン市、ホーチミン市などの大都市でも広く消費され、海外の顧客からも多くの好評を得ています。

協同組合は毎月、200 あまりの薬用錦織製品を市場に出荷し、15人～20 人のザオ族に 安定した雇用を創出しています。現在、組合員の月収は、1 人あたり約600万ドン、4万円程度に上っています。組合員であるリー・ティ・チャンさんは次のように明らかにしました。

(テープ)

「以前は在宅で仕立て屋として働いていましたが、収入が安定しませんでした。現在、クエンさんの協同組合のメンバーになってから、安定した仕事に就く傍ら、家族や子供の世話をする時間もあります」

これまでに、クエンさんが組合長を務めるティエンアン協同組合はOCOP基準を満たした9つの品目を有しています。クエンさんは消費市場の拡大、製品の海外輸出を実現する方針です。