チャンソン村の扇子 |
先週ご紹介したように、チャンソン村は大工村としても有名ですが、数百年の歴史を誇る扇子の発祥地としても知られています。村の路地の両側には、無数の扇子が並びます。乾燥のためです。また、工房に入ると、その色とりどりの無数の扇子に、芸術空間に迷ってしまったかのような感覚に陥ります。19世紀に、チャンソン村の扇子はベトナム国内外で有名になりました。2008年には、村の職人2人がベトナムで最大という扇子を作っています。そのうちの1人、フイ・クアン・ボーさんの話です。
(テープ)
「自分たちが作ったベトナムで1番大きな扇子は、今、ハノイ市内のベトナム文化芸術展示センターにあります。高さ5メートル、幅は10メートルで、骨組みは全て木製です。プリント加工されたシルク生地の扇子で、田舎の市場の光景が描かれています。」
チャンソン村の扇子は、種類が豊富です。涼を取るために風を送るだけのものではありません。飾り扇(おうぎ)や礼装の小物として使われる祝儀扇、舞扇などと多種多様です。紙のものもあれば、絹の扇子もあります。模様は、ベトナム国内の有名な景勝地や昔話の人物、詩や対句などを記したものと様々です。先ほどの扇子職人のボーさんの話です。
(テープ)
「飾り扇は高級な扇子です。骨組みは竹で出来ています。竹の皮の部分は、弾力とねばりがあり腰も強いので、扇子の骨組みに利用されます。両端にある親骨は、竹以外に水牛などの角(つの)で作られることもあります。面の部分は、絵師が絹や紙に手描きする絵や型刷り、木版画です。非常に芸術的で、これがチャンソン扇子の特徴になっています。龍や鳳凰、草花、風景、ホーチミン元主席の肖像などが描かれます。」
扇子が出来上がるまでに、大体20以上の工程があるそうです。そのほとんどが熟練の職人による手作業で、一本一本丁寧に作られています。優しい風を作り、手に持った時にしっくりとなじみ、見た目にも美しいものを作るためには、成育3年以上のすらりと細いねばりのある竹のみが使われます。耐久性を高めるために、竹は水に浸してから使われます。紙の扇子には、ベトナムのドンホー版画に使われる「ゾー」という木の皮から作られた紙を使います。色の乗りを良くするために、特別に作った糊を表面に塗ります。そうすることで、普通の手すき紙にはない独特の光沢ができます。2枚の紙を貼り合わせた後、絵師はそこに絵を描きます。その後、扇子職人が、骨組み部分の竹の長さを面となる紙に合わせて切ります。切り揃えた後、骨組みに糊を塗って、図柄が描かれた紙に差し込みます。
職人の話です。
(テープ)
「扇子の完成には多くの工程があります。全て手作業です。得意な製品を作るために、全部の手順に注意を払います。」
現在、チャンソン村の扇子は、日本や韓国、イギリス、フランス、ドイツなど多くの国に輸出されています。扇子生産は、村に安定した生活をもたらすだけでなく、伝統的職業の保存に繋がっているということです。チャンソン扇子は、心地よい風と共に、ベトナムの文化を世界中に送っているようです。